ハイエナ
夜勤バイト明け。
日中に予定があるわけでもないので夕方くらいまで睡眠を取ろうかとベッドに横になり、枕元とベッド下に転がっている雑誌をザッピングする。そんな中、以前古本屋で買ってきたGPZ本に興味深い記事を見つけた。
GPZ900Rリアホイールの他車種流用記事。『~リアホイールは900SSを使用……』
「900SS!」思わず声に出す。少しずつ近づいていた睡魔も驚いてどこかに逃げてしまった。孝子まだ処分してないよね? 今日は土曜日、月曜日が待ち遠しい。
そわそわしながら土日を過ごしまじめに朝から学校へと顔を出す。
しかし月曜日は孝子が現れずに終わった。もしかしたらすれ違っていただけかもだけど。
火曜日、学食に孝子発見! 孝子相手に会話の組み立ては無用。早速切り出す。
「孝子さぁ、900SSって今どうなってるの?」
「パパの車の後ろに置いてる」と無関心そうに答える孝子。やはり廃車なのか聞いてみると、その予定とのこと。
「そしたらさぁ、リアホイール周り貰ってもいい?」と探るように聞くと「いいけど、どうするの?」と即答。そりゃそうよね。GPZに付けてワイドホイールにしていた記事のことを話す。
「付かなかった時に返却とかは困るけど、キョウが責任もって処分してくれるなら」と簡単に譲ってもらえることになった。第一関門はクリア。あとは宗則に相談だね。
「あと、フロントはいいの?」と聞く孝子に、返答を悩んでると孝子の方から、まぁフロントはお釈迦だけど、と笑いながら告げられた。そういえばそうだった。
もしリアホイールが付いたとしても宗則のCBみたいに前後違うデザインのホイールになっちゃうね。
「そういえば、昨日は来てなかったの?」「家で寝てた」なるほど、孝子らしい。
「新しいバイト始めたからリズムが出来るまで眠いんだよね」と、例の詳しくは教えてくれないけれど時給のいい仕事にはまだ慣れていない様子だ。
お父さんが立替ている748Rの整備代や諸費用などを早く返してしまいたいらしく今までのファーストフード店から効率の良いバイトのみに完全に切り替えたそうだ。
「いかがわしいバイトじゃないの?」と尋ねたが、飲み屋の接客だとしか教えてくれなかった。それってキャバクラなんじゃあ……。
気持ちが昂っているので講義をサボってそのまま学食で宗則を待った。
遅れて登場した宗則にドカティのホイールの話をすると案の定、食い付いてきた。興奮気味に話す宗則の話の要点は、流用にはいくつか条件があるということだった。
一番重要なのはリアホイールの軸、アクスルシャフトの径。そもそもの幅、これはリアホイールが入っているスイングアームの内寸を超えなければカラー等で何とかなる。次にチェーンライン、あとは同じ軸で動くリアブレーキ周りの設置。
……いやいや、ちょっと多くない? 粗大ゴミの出し方調べないとかも。
あとはGPZの特集本をもう何冊か探しに古本屋巡りかな。この前買ってきた本のバックナンバーとか見つかるといいな。
宗則に900SSのバラシ作業を手伝ってほしいと伝え快諾をいただく。
もう今日は講義には出ずにもう一度孝子の登場を待って日程を決めてしまおう。
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