トモくんのTW
駐輪場には数台の中型オートバイが増えた。
一台いかにも速そうなフルカウルのバイクが停まっていて気になる。タイヤも割と端まで使われている。全然端まで使えていない私が偉そうには言えないけど、このバイクは間違いなく峠に走りに行っている車両だ。機会があればオーナーを見つけて声をかけてみるのもいいかも知れない。
最近は学食でトモくんをよく見かけるようになった。
宗則の提案でユキとヒロシとトモくんの三人で次のツーリングプランを練っている。今までは三年生がいないから仕方なく部長になっていた感があったのだろうか? 三年生になってから宗則は少しサークル代表っぽくなった気がする。トモくんにツーリングプランのサポートを命じたのに関しても後輩を育てる意図があったのだろう。
「お邪魔するね」三人の脇に座る。
「おつかれー」「お疲れ様です、キョウさん」「お疲れ!」三者三様。
そういえば、始まる前に終わっていたトモくんの淡い恋心はその後どうなったんだろう。自然消火できてるといいのだけれど。ジト目で見てたので言いたいことが伝わったのかもしれない。トモくんから正にその話題を持ち掛けられた。
「そういえば最近、あのフワフワした服の子見ないんですよね……」あー、と生返事する私。
「カリキュラム変わると他学部だとなかなか会えないかもねー」とユキ
「就職活動で忙しいのかも」と前向きな発言のトモくん。
だが、年上だと知っているのならその時点で諦めなさいよとも思う。お姉さんは君が年上の女性を落とせるのか心配だよ。そしてさらに今回は事故物件だからやめとけと。
「何の話?」とヒロシ。三人とも真面目にやりすぎて疲れていたのだろう。いい気分転換のネタを探している感が伝わる。
トモくんがかくかくしかじかな恋心を話す。
「あの娘有名だよね、短大生じゃなかったっけ?」とヒロシ。
私とユキの気遣い空しく、トモくんの始まりもしなかった恋が相手の卒業という形で終わりを告げてしまった。強制終了ではなく、何となく忘れていくようにフェードアウトさせてあげたかった。案外本気だったのか、顔は笑顔を保っているが目に見えて瞳から光が失われていく。トモくんが軽く話してたのは照れ隠しだったのかもしれない。
いつかトモくんは彼女ができたらTWでタンデムしたいって言ってたっけ。
その気持ち少しだけわかるよ。私のGPZ初タンデムは孝子だったから……。
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