ミーティング

 学食で珍しく現状のフルメンバーが揃っている。

「次のツーリングだけど梅雨が明けてからの七月にしようかなと」宗則が話し始める。今日はわざわざ時間を合わせて全員でツーリング計画を練るために集まった。


「待ちくたびれましたよー!」と現状はツーリングのみ参加のトモくん。今年誕生日がきたら君も飲み会参加だよ。顔を洗って待って、いや飲み会終わったら顔を洗うことになるのか。

「うん、そこの二人が一年に二回もやらかしたから」私と孝子が宗則から目を逸らす。

 まずは一人ずつ案とか希望とかを出す。私はこういう時完全にノーアイデア。孝子の希望はワイディングがあること。珍しくユキとヒロシがだんまりを決め込んでいる。二人とも既に近隣には行きたいところがないのではないかな。しかし、実際には二人とも同じことを考えていたらしく、まず最初にユキが口火を切った。

「七月はやめにして、八月にロングにしませんかー?」間髪入れずにヒロシも「俺も同意見!」とのっかる。

「と言うと?」宗則が聞き返す。

「北海道!」とユキとヒロシがハモる。ネットだとケコーンしるとか書き込まれそうなタイミング。そして北海道ツーリング。そういえば二人とも大晦日にそんな話をしていた。

「あれ? ヒロシ彼女は?」今度はヒロシが私から目を逸らす。

 腕組みをしたわざとらしいポーズで少しの時間考えた後、宗則が

「ヒロシとユキで何パターンかプラン練れる?」と聞く。頷く二人。

「あとは……」と宗則が続ける。

「田村はヒロシとユキがプラン練るのをサポートしてあげて、調べ事とか」と宗則直々にトモくんにお願いする。

「ハイッ!」

 良く言えば基本的に個人の意見を尊重する方針のバイクサークル、要は放任主義なだけだけど。そんなサークルで急に現部長から先輩っぽいことを言われたのが嬉しいかったのか、トモくんが元気一杯に返事した。

「北海道なら日程はフェリーの予約合戦次第だけど、基本的には8月最終週ぐらいにした方がまだ予約しやすいと思うんだよね、どうせ俺ら休みだし」と宗則。まずはいくつかヒロシとユキとトモくんにプランを作ってもらって、全員が満場一致ならそれで、そうでないなら日程の都合とかもあるから、定期的に合流ポイントを決めてそれぞれソロかツインかで自由行動ってのはどうだろう? と言うのが宗則の提案。これは三年生になってから忙しそうな孝子の事情を考慮しての助け舟だと思う。もちろん、できるだけ満場一致になるようにしたいと言って締めくくった。


「北海道か。七月はみんなバイト頑張らないとだね」みんなが私から目を逸らす。アレレ? みんな現実見ようよ。

 とは言え、金銭的なことをすぐ気にするのは私の悪い癖なのかも知れないな、とも思った。

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