水切り大会、優勝は京だった。

 いや、まぁ、当然と言えば当然だが。

 準優勝が杉浦、その次が虎徹、最後に鈴木だ。

 鈴木は年下にすら負けたということでとてもショックを受けてどんよりと肩を落としている。

「俺はやっぱりダメなやつだ…」

「す、鈴木…」

 流石に気の毒になって、京はそっとその肩に手を置いた。

「人には向き不向きってのがあるんだ。お前にはお前にしかできねぇことがある」

「…兄貴かっけぇっす!!」

 なぜかその言葉を聞いた虎徹が瞳をキラキラと輝かせてくるのでそれを無視して、無言でうなずく鈴木をチラリと見る。

「伊吹、大丈夫だ。こいつ単純だからそんなに気にしてない」

 目をすがめて腰に手をやる杉浦に、京は戸惑ったように眉を寄せる。

「そ、そうか?」

「うぅ…」

 一応、傷付いてはいるようだが。

「ほっといて大丈夫だよ。てか、おい鈴木。お前ジュース買ってこいよ」

 そう。今回の勝負でビリだった人間は全員分のジュースを奢るという約束だったのだ。ちなみに、それを言い出したのは鈴木である。言い出しっぺが負けると言うのは、やはりお約束か。

「うぃーす」

 それにうなずいて、鈴木はコンビニがある方向へと河川敷を上がっていく。

「…俺もついて」

「いいから。あんま心配するなって」

 京がその背中を追いかけようとしたところで、その襟をがしりと掴んで杉浦が止めた。

「ほれ、あれ見てみろ」

 ビッと指差された先にはすでに立ち直った様子の鈴木が道を歩いている。

「な?あいつ基本的には気にしないからさ。落ち込むのは最初だけ」

 ふんと鼻で笑って呆れたように息をつく杉浦に、京と虎徹は苦笑した。



 少し虚しく思いつつも、鈴木は一人コンビニで飲み物をカゴに入れていた。

(うーん、俺水切りの才能ないんかな)

 ため息混じりにレジに並んで、会計を済ませる。

「よっしゃ、戻りますかー」

 気を取り直して、鈴木はコンビニを出る。と、きた時にはいなったはずの柄の悪い不良たちが屯っていて、思わずぶつかってしまった。

「あ、さーせん」

 けろりと鈴木が簡単に謝罪して、その場を立ち去ろうとする。

「おいおい待てよ」

 ニタニタと趣味の悪い笑みを浮かべて、不良の一人が彼の肩に腕を回した。

「なんすか」

 流石に面倒になって、鈴木が目をすがめて低い声を出した。

「そんな簡単な謝罪で許されんなら警察はいらねぇよ。金出せよ、金」

「はぁ?」

「え、なに?ぶつかっといて文句言うの?へぇぇ、ずいぶん生意気だなぁ」

 見たところ高校生であるのは間違いない。年上であるにしろ、一歳か二歳差だ。そんな奴らに偉そうにされる謂れはない。

「申し訳ないんすけど、俺急いでるんで」

 とはいえ問題ごとを起こすのは良くない。ここは穏便に済ませなければ。

 努めて明るく言って、その腕をすり抜ける。

「じゃ」

「おいおーい、待ぁてよ」

 それでもなお絡みついてくる不良に、鈴木は深いため息をついた。

(こりゃ戻るの遅くなりそうだな)

 

 

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