④
おやつを食べ終えて、ずっとゲームをするのもなんだからと近くにある河川敷に四人は移動した。
太陽の光を受けてキラキラと光る川を眺めて、鈴木が腕を組む。
「ふむ。ではなにをしようか」
「おい。ノープランかよ」
ちなみに、河川敷に行こうと提案したのは鈴木である。
杉浦がなぜかしたら顔をしている鈴木の頭をぺしりと軽く叩いた。
「だって〜。ダチと休日に河川敷で遊ぶって、なんか憧れじゃん?」
それはわかる気がする、と京は一人心の中で同意した。
「…あ」
思い出したように声をあげた京に、三人は首をかしげる。
「なんか思いついた?」
杉浦の問いに、彼はこくりとうなずき、足元にあった平べったい石を拾い上げて、それを無言で川に向かって投げた。
ビュッという鋭い空気の音とともに、石がぴょんぴょんと川を飛んでいく。
「水切りっすね!」
虎徹が目を丸くして言う。
「おぉ、これ水切りっていうのか。初めて知った」
「右に同じく」
鈴木の次に、杉浦が感心したように言う。
「…これで、勝負しないか?」
少し笑って京が言う。それに、三人は面白そうに笑った。
「俺やったことないけど、面白そう!やるやる」
「俺もあんまやったことないけど、やりたい」
「やりたいっす!」
「じゃあ、決まりだな。鈴木と杉浦には俺が教える。虎徹は…まぁいいだろ」
そっけないその言葉に、虎徹はショックを受けたように肩を落とす。
「あんまりっす…兄貴…」
「冗談だ。最初は練習な」
その頭に手を置いて、京は再び足元にある石の中から平べったい石を選んでそれを三人に見せる。
「石は、できるだけ平べったいやつを選ぶんだ」
ふむふむと三人はうなずき、各々転がっている石の中から平べったいものを選んでいく。
それを確認して、京は体を軽く横向きにして、石を持っている方の手を斜めに振りあげる。そのまま、石を放り投げた。
先ほどと同じように連続して石が水音を立てて空を切っていく。
「「おぉ」」
鈴木と杉浦の声が重なった。虎徹がなぜか自慢げに胸を反らす。京が少し気恥ずかしそうに顔を逸らした。
「…今みたいな感じでやればできると思う。何かわからなかったら聞け」
それだけ言って、京はそっと距離を取ってしまった。
そんな京に少し笑って、三人は先程の一連を真似て練習を始めた。
あーだこーだと言いながら水切りに夢中になっている三人を見て、京はふっと笑った。
まさか、中学時代に喧嘩の憂さ晴らしとして一人で腕を上げていた水切りが、こんなところで役に立つことになるとは。
あの時はなんの楽しみも感じられず、ただ鬱憤を晴らすために石を投げていただけだったが。
「…人とやるのは案外、楽しいもんだな」
つぶやいて、京は嬉しそうにこっそり笑った。
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