②
三人で鈴木が持ってきたテレビゲームをプレイしていると、家のインターフォンが鳴った。
美代が向かうと、なんだか玄関が騒がしい。
一度手を止めて、京は玄関へ向かった。
「あ、兄貴!」
「…うわ」
思わず顔をしかめてしまう京である。
そこには満面の笑みを浮かべる虎徹がいたのだ。
「帰れ」
「ひどい!!」
睨んでくる京にショックを受けている虎徹に、美代が気の毒そうに彼を見た。
「京くん、かわいそうじゃない。せっかくきてくれたのに…」
それに、ぐっと喉を詰まらせる。京は美代に逆らえないのだ。
「…お袋、今日は杉浦たちがいる」
「いいじゃない。みんな良い子だからきっとすぐ仲良くなれるわ」
そういう問題ではないのだ。杉浦にはもうバレているのでいいが、鈴木には話していない。ていうか、これ以上広まってほしくない。
京は深いため息をついて、虎徹の肩をがしりと掴んだ。
「おい、虎徹」
「っす!」
鋭い眼光に、虎徹はピシッと背筋を伸ばす。
「来ちまったんわ仕方ねぇ。すぐに帰れとは言わない。ただ夕方には帰れよ?あとな」
ミシミシと虎徹の肩が音を立てる。
「痛いっす!」
それにふっと力を緩めて、京は額と額をコツンと合わせた。
「俺が喧嘩するってことダチにバラしたら、てめぇのこと物理的にバラしてやるからな」
本気だ。そう思って、虎徹は敬礼した。
「うっす!肝に銘じます!!」
「仲良いわね〜」
呑気にそう言う美代に、京はもう一度ため息をつくのだった。
リビングに虎徹と共に戻ると、杉浦が驚いたように目を丸くして虎徹を見る。そして、隣にいる鈴木をちらりと見た。京と目を合わせて、無言でうなずきあう。
「…おぉー、南條クンじゃないかー」
「あ、杉浦さん、っすね!ちわっす!」
綺麗に九十度のお辞儀をして挨拶をする虎徹にうなずいて、不思議そうに首をかしげている鈴木を見やる。
「この子、伊吹の引越し前の学校の後輩なんだって。伊吹が大好きらしい」
「へぇぇ、伊吹年下にモテモテなんだな。ちょっとわかる」
感心したように言って、彼は自分を親指で指した。
「俺は鈴木俊哉。よろしくな」
「南條虎徹っす!よろしくおねがいしゃーす!」
ピシッとお辞儀をする虎徹にうなずく。京は、そのやりとりに心臓をどくどくと動かしていた。もしも鈴木にもバレてしまったらどうしようか。本気で虎徹のことをバラしてしまいそうだったので、色んな意味で怖い。
(頼むから早く帰ってくれ…)
深いため息をつきながら、虎徹の肩に手を置いた。
「おい、虎徹」
「うす」
「…ゲーム、やってくか」
正直言って早く帰って欲しいとしか思っていないが、せっかく埼玉から来てくれたのだ。一応それなりの礼儀は払っておかねばならない。
京の言葉に、虎徹は嬉しそうに瞳を輝かせた。
「いいんすか!?やります!!」
そのやりとりを聞いていた鈴木がコントローラーを虎徹に渡した。
「やり方わかるか?」
「なんとなくなら」
ちょこんとその隣に座って、テレビの画面を見つめる。
京もまた少し疲れたように息をついてから、杉浦の隣に座った。
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