三人で鈴木が持ってきたテレビゲームをプレイしていると、家のインターフォンが鳴った。

 美代が向かうと、なんだか玄関が騒がしい。

 一度手を止めて、京は玄関へ向かった。

「あ、兄貴!」

「…うわ」

 思わず顔をしかめてしまう京である。

 そこには満面の笑みを浮かべる虎徹がいたのだ。

「帰れ」

「ひどい!!」

 睨んでくる京にショックを受けている虎徹に、美代が気の毒そうに彼を見た。

「京くん、かわいそうじゃない。せっかくきてくれたのに…」

 それに、ぐっと喉を詰まらせる。京は美代に逆らえないのだ。

「…お袋、今日は杉浦たちがいる」

「いいじゃない。みんな良い子だからきっとすぐ仲良くなれるわ」

 そういう問題ではないのだ。杉浦にはもうバレているのでいいが、鈴木には話していない。ていうか、これ以上広まってほしくない。

 京は深いため息をついて、虎徹の肩をがしりと掴んだ。

「おい、虎徹」

「っす!」

 鋭い眼光に、虎徹はピシッと背筋を伸ばす。

「来ちまったんわ仕方ねぇ。すぐに帰れとは言わない。ただ夕方には帰れよ?あとな」

 ミシミシと虎徹の肩が音を立てる。

「痛いっす!」

 それにふっと力を緩めて、京は額と額をコツンと合わせた。

「俺が喧嘩するってことダチにバラしたら、てめぇのこと物理的にバラしてやるからな」

 本気だ。そう思って、虎徹は敬礼した。

「うっす!肝に銘じます!!」

「仲良いわね〜」

 呑気にそう言う美代に、京はもう一度ため息をつくのだった。



 リビングに虎徹と共に戻ると、杉浦が驚いたように目を丸くして虎徹を見る。そして、隣にいる鈴木をちらりと見た。京と目を合わせて、無言でうなずきあう。

「…おぉー、南條クンじゃないかー」

「あ、杉浦さん、っすね!ちわっす!」

 綺麗に九十度のお辞儀をして挨拶をする虎徹にうなずいて、不思議そうに首をかしげている鈴木を見やる。

「この子、伊吹の引越し前の学校の後輩なんだって。伊吹が大好きらしい」

「へぇぇ、伊吹年下にモテモテなんだな。ちょっとわかる」

 感心したように言って、彼は自分を親指で指した。

「俺は鈴木俊哉。よろしくな」

「南條虎徹っす!よろしくおねがいしゃーす!」

 ピシッとお辞儀をする虎徹にうなずく。京は、そのやりとりに心臓をどくどくと動かしていた。もしも鈴木にもバレてしまったらどうしようか。本気で虎徹のことをバラしてしまいそうだったので、色んな意味で怖い。

(頼むから早く帰ってくれ…)

 深いため息をつきながら、虎徹の肩に手を置いた。

「おい、虎徹」

「うす」

「…ゲーム、やってくか」

 正直言って早く帰って欲しいとしか思っていないが、せっかく埼玉から来てくれたのだ。一応それなりの礼儀は払っておかねばならない。

 京の言葉に、虎徹は嬉しそうに瞳を輝かせた。

「いいんすか!?やります!!」

 そのやりとりを聞いていた鈴木がコントローラーを虎徹に渡した。

「やり方わかるか?」

「なんとなくなら」

 ちょこんとその隣に座って、テレビの画面を見つめる。

 京もまた少し疲れたように息をついてから、杉浦の隣に座った。


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