第3話


言い忘れていたが、彼女は私が通っていた進学塾に中途半端な時期に入塾してきた、私以外の唯一の女子生徒である。


彼女と出会う前はひたすらに内気で、声を発することすら恐れるほどの私であった。

しかし、彼女と出会ったことで変わり、彼女を揶揄う様な口調でちょっかいをかけて来る男子生徒に自ら歯向かうような態度で汚い言葉を吐いたりするような、『どうしようもない』人間に成り下がってしまったのだった。


もちろん、自覚は無かった。こうして彼女の人気に肖って、借り物の自信に酔い、見当外れに粋がっているだけの女として、傲慢な態度で異性を見下すことばかりを覚え、それが正しいとさえ錯覚していた。



そんなある時、新学期から半年遅れで1人の男子生徒が入塾した。大きな目が特徴的な奴だった。

初めは無愛想であった彼も、他の生徒と馴染んでいく程に小学生らしい明るさをとりもどし、1ヶ月も経つ頃には教室の真ん中でゲラゲラと下品な笑い声をあげるようにまでなっていた。


もちろん彼もまた、「ひーちゃん」の反応見たさに彼女を揶揄う輪に加わっていたのだが、時々とてつもなくつまらなそうな顔で別の方を見るようなことがあった。


そんな彼に目敏く気が付いた私は、彼に対する疑問と、微かな喜びを胸に抱き、初めて自分の意思で彼に…男の子というものに、近づいた。

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