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 今から三時間前。ふわふわとからだを宙に浮かべて周囲を警戒していた〝晴眼〟が、複数ある単眼のひとつをこちらに向けた。十児は自らの失策に気がつく。どこからか情報が漏れたらしい。

 現在、地上では空挺部隊や陸戦隊の陽動作戦が始まっていて、十児を水先案内人パイロットとした黒衣の集団――主上を倒す本命の部隊は、ここに――この地下の下水道にいた。

「まもるさん、ここは僕に任せて先に行ってて下さい。もう道案内の必要ないとこですから、内裏までもう少しですから先に行ってて下さい」

 当初、十児は義姉の九音ここねと同じ、陽動作戦のための陽動作戦に志願していた。だが、この下水道の内部構造を把握している点で、彼の『形成獣』が索敵能力と未来予測に秀でている点で、この任務に就くこととなった。

「〝晴眼〟もいます。大丈夫ですよ。任せて下さい」

 闇が揺れた。井乃原まもるを取り囲んでいる黒ずくめの集団が、同意するようにうなずいたのだ。

「必ず――必ず追いついてくると、約束して」

 井乃原まもるの表情は、すべてを悟っているようだった。

「……善処します」

「では、この場は彼に任せて、私達は先を急ぎましょう」

 闇が揺れた。井乃原まもるを取り囲んでいる黒ずくめの集団が、同意するようにうなずいた。

 井乃原まもるを中心に闇が移動し、十児から遠ざかっていく。それを見送りながら、彼はおこりのような震えを堪えていた。

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