scene.15

《Jiin.cut》



大胆な時もあるのに、素直なグク君。


自分の方が歳下でカワイイのに

僕にカワイイと言うグク君。


彼の'本気の本気'とは……



本番の撮影。グク君に壁へと押し付けられる。

戸惑うってしまうけれど、大胆に攻めてきて…

リハーサル通り首に顔を埋めてきた。


「……ッ…」


唇の感触や、グク君の手の感触、

触れられている所へ意識が集中しておかしくなる。


「…ハー…」


溜め息の熱を帯びた微風にもおかしくなる。



「カットー!」


監督の声が響くと、僕や監督に頭を下げるグク君。


「ごめんなさい!触り過ぎました!」


「……」


「ゃ違う…ジーン君、もう少しグク君に

反応的な雰囲気出せるかな?もう少しだけ…」


「はい!スミマセン!

ただ戸惑ってるだけでしたよね」


シナリオ通りに、

役を演じなければならないのに

うわの空になってしまった。


「戸惑いは良い感じだから!

そこにチョット抗う感じををプラスでッ」



…何テイクも監督の指示に従って撮影し、

ベットシーンもNGを出したりして

何テイクも撮影した。



「お疲れ様ー良いのが撮れたよ!」


監督の声が響いて、

やっと芝居では無い言葉を口にする。


「「お疲れ様です…」」


グク君と同時に挨拶した。

今の状況はベットに僕が仰向けになり、

グク君が上から覆い被さったまま。

周りのスタッフが

少し気まずそうに片付けを始める。



「…ちょっと…今日は何回もスミマセン」


「…僕のほうがゴメン」


「いえ…僕の方が…」


お互い謝り返す。

このままふたりずっと謝り続けそうな気もするし

目の前で少しオロオロしだすグク君。


「フッ…疲れたね?」


「はい…だから、このまま少し休みましょうか?」



実は反応してしまった。2人とも。

布団で隠れてはいるけれど、

お互いの体はくっ付いていて、なんとなくわかる。


僕の横に倒れ込むように寝転んで

手を伸ばされ抱き寄せられた。


「……グク君…」


「…えっと…本気の本気…」


「ぁ…ぅん、分かる気がするな、と思った。

役になりきると自分の気持ちが本気かとか

区別付かなくなって、

もうホント愛おしくなっちゃう…グク君好き!

ってなってるもん僕」


「…?」


本気でぶつかって来てくれるグク君。

そして反応してるのが僕だけじゃない変な安心感。



僕もグク君をギュッと抱きしめた。







《Gkook.cut》



「!!!」



撮影が済んで、2人でベットの上に

横たわっている状態。

そして何となく僕もジーンさんも反応しているし、

反応するようなキスや

ジーンさんの身体を弄った後なのに、…これは…



僕の動揺とは裏腹に

抱きついて来たジーンさんからは

ゆっくり寝息のような呼吸、息遣いが聞こえた。


そうだった。もう撮影は終わったから

これ以上の事は出来ない。

それでも抱きついてきたジーンさんが可愛くて…

僕も呼吸を深くしてどうにか落ち着かせる。



このまま、眠るように抱き合うだけでも

十分満足な事なんだ。

特に会話はせず軽く抱き合いながら暫く休憩した。



「…グク君、そろそろ…」


「ぁ…ですね、帰りましょうか…」



本当に夢見ていたように、現実が分からなくなる。


'グク君好き!'


頭を回り続けるジーンさんの言葉は確かだよな?

その言葉を放ったジーンさんの、

照れたような顔も回り続けてる。


…'気持ちが本気かとか区別付かなくなって'…


まぁ現実は、役の心境と

現実との境目があやふやなだけだろうけど。



「…はぁ…」


思わず出てしまった溜め息。


「…疲れてるね?

今日は夜更かししないで早く寝なよ?」


「そう、ですね…けど…電話していいですか?」


ベットから下りるジーンさんを手で支えた。


「あ、ありがと…えっと、そりゃもちろん」


「……はぁ」


区別付かない…勘違い。でも、まぁいいか…


「?」


「いえ、カワイイなと」


「……」


「…ぁ、怒ら…ない?」


「…え⁈何!いつも僕が怒ってるみたいに…」


「……」


くっついたまま、

ジーンさんを支えながら歩いて控室へ移動する。


「…まぁ、なんか、嬉しいから…いい…けど!

僕からしたら、グク君の方がカワイイけどねッ!」


「…はぁ」



ジーンさんの言葉や態度が、

全て役抜きの言葉や態度ならいいけど…


全てジーンさんの役、僕の役、込みの言葉や態度で

勘違いに等しい。



…けど、まぁ…いいんだ。


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