scene.14

《Gkook.cut》



監督に言われ、今日撮るベットシーンの確認で

寝そべる前の2人の動きを確認していた。


芝居とは思えないような可愛い反応が続く。

ジーンさんを抱きしめたまま、

顔を覗き込むと赤い頬に潤んだ瞳。

本番でそんな顔されたら…


「もっと僕に慣れといて下さい」


「え、」


抱きしめたまま、

またジーンさんの首に顔を埋める。

いろいろ、耐えられそうもない。

埋めた首は綺麗で、いい匂いがして、

少し汗ばんでいるのが余計…止められなくて…

首に唇を当てて動かした。


「…こ、ら…」


ジーンさんの溜め息混じりの声が

脳や至る所に突き刺さった。


「練習…じゃないですか…」


首から唇へ、唇を動かした。

そしてジーンさんの身体に、手を這わせた。



どこまで練習として許されるか…

キスを深くしそうになり、どうにか思いとどまる。

けど手はジーンさんの体を押さえるように撫で…


「…ッグク君!慣れ、なくても…よくない?

もぅここで、こんな…」


「…したく、ないですか」


「…ぅん…これ以上は…」


「……」


「あ、や、したくないっていうか、

ヤバイっていうか」


「…ヤバイ?」



そうだよな…慣れてなんて言われても

ここまでしたくないよな。

擬似恋人はカメラの前だけ…って当たり前なのに…

まぁ冷静になれて良かった。


「え、だって…慣れる為にしたって、

絶対慣れないもん。慣れない自信しかないもん」



…え?'だって'?

…'もん'、'もん'って何……


この可愛い生き物…

ここで最後までしたくなったけど

それはもう犯罪であり得ないどうしよう…


脳内で花畑を暴れ回る自分の姿が浮かぶ。



「…どうしましょうか…」


「…とりあえず…落ち着こう」


密着したまま、ジーンさんから抱きしめられた。

こんなのシナリオにない…

何となく抱きしめ返す。


「……」


「ふふっ……本番、頑張ろうね」


「ぁ…はい…予定通り、

激しくなる予定ですから!」


「…ぅ…うん!どんと来い!

もうどうにでもなれ!…ははは…楽しみだな、

…NG出したらゴメンね…」



この可愛い人を更に強く抱きしめた。


脳内の暴れ回る自分を抑えるように。







《監督.cut》



「ベットシーン予定通り撮れそうだから

スタンバイよろしく!」


今日の撮影も順調に進み、

主演2人の大事なシーンをこれから撮る事になり

2人に声をかけた。

するとジーン君が固い表情に変わったので

すかざず声をかけようと思った矢先、

グク君がジーン君に話しかけた。


「……大丈夫ですか」


「あっグク君。ん?大丈夫だよ?

…グク君は?もう用意出来た?」


「大丈夫であればいいんですけど…

激しくなる予定なので…」


「ぅん…」


心配そうにジーン君を見つめるグク君。

2人の様子を見守る事にしたけど…

見つめられて照れるジーン君カワイイな。



「…なに?」


「…疲れてます?ホントに大丈夫ですか?」


「?大丈夫だよ!どんとこい!…僕もグク君を

本気で好きだと思ってお芝居するから!」


「シナリオ的にはジーンさん、まだ、

僕を好きじゃないです…」


「そう思う?僕はさ、

もう惹かれてると思うんだよ、シナリオ的にも」


「…やっぱりジーンさんは凄いですね」


「ん?何がかな?凄い?カッコイイ?」


「はい。カッコイイです」


「ありがと!」



カッコイイと言われて(言わせて)

喜んでいる姿もカワイイし、

僕と同じ解釈で

ジーン君の役がグク君の役に既に惹かれてる、と

思うジーン君は流石だと思う。


これだから、2人の様子を見守るのが

楽しくてしょうがない。



「…芝居で、本気で好きとか思える所とか、

ジーンさん凄いです…」


「えー?だってグク君もそうじゃん」


「え?僕、思い込みとかの芝居無理で、

本気の本気、ですけど…」


「え?…え?」


「あ…」



ベットシーンの撮影は、

僕が声でキスのタイミングや手足の動きを指示して動いて貰う事も出来なくはないし、

そういうドラマも多いけれど…

それじゃ、息遣いや衣擦れの音まで撮れない。


彼等のリアルさがドラマの中枢なんだよな…



「ハイ!じゃあカメラ回すよー!」


ふたり、告白でもしたような、

告白でも受けたような、良い雰囲気だから

このまま撮影に入る事にする。 


「おー!なんか雰囲気出てるねッ!シーン!

アクション!!」



お互いがお互いで頭の中いっぱい…

とでも言っているような表情が、そのまま撮れた。


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