scene.11
《Jiin.cut》
昨日、グク君が頑張るって言ってくれた。
そして僕も頑張ると言った。
ベットシーンは何度やっても緊張する。
そして適当が許されない監督だから
現場の空気も少しピリピリしていた。
「おはようございます!」
休憩スペースに続々と俳優達が集まる中、
グク君もやって来た。
「グク君おはよ!…よく寝れた?
…?スッキリしてるね」
「はい、短時間でも快眠です!
やはりジーンさんとの電話は
僕には必要不可欠なものでした!」
周りの俳優仲間にも聞こえる大きな声で…
ほんといつもより元気だ。
「では隣の部屋でベットイン(の確認)…」
腕を引っ張られ、別室へと誘導される。
少し強引なグク君。
別室には寝転ぶ芝居、
まさにベットシーンの確認の為のマットがあり、
そこに誘導されるがまま寝転ぶと
仰向けの僕の上にグクくんが覆い被さって来た。
何度もキスはしてるのに、身構えてしまう。
少し低いと聞いていたグク君の身長は
グク君の方が高いくらいに思えてきたし、
ドラマの為に鍛えた体は
僕よりもほんと逞しくて…
グク君に押さえつけられたら……
「…確認って…?えっと…」
今まで少し強引だったグク君の動きが急に止まり
数秒間。
僕のおかしな思考もどうにか止まってくれた。
「え、…この体制でどうとか?
ここで腕をどうとか?っていう確認…」
「…あーそれ無理ですね。頭で考えられません」
…僕達なんの為に、こんな体制になってるんだ…?
「…じゃあ…本番、
僕を好きだと思って本気で…?」
「…それなら大丈夫そうです」
「じゃあ、戻ろうか…」
覆い被されたままで気まずいし、
意気込みを確認出来たから…
後は本番、監督の指示に従って…
起き上がろうと思いグク君を見ると、
覆い被さって来たまま動こうとせずに
すぐ上から心配そうに僕を見つめる瞳。
「…されたら嫌、とかありますか?」
「?」
「僕にここは触られたく無いとか…」
「えーと…それは…特に無いかな。
あ、けど、僕も男なので…あまり刺激されると…
反応しちゃうかも…」
「お互いさまなので。反応しても、引かないで
そのまま演技して貰えますか?」
「ぁうん、それは…お互いに。
僕にも引かないで貰えると…」
「引きません!けど、本番みんなの前で
出来るだけそうならないように…
どこまでで反応するか試してもいいですかっ」
「いやいや…チョットそれは」
以前グク君が反応しても気にならなかったけど
自分が反応するのは恐怖だし、
反応するまで試す行為って……何…
断固拒否した。
本番。
グク君は真剣な顔で集中し、緊張している様子。
僕は顔に出てないつもりだけど落ち着かずに、
緊張を解そうとグク君に話しかけた。
「…緊張しないで、とりあえずやってみよう。
駄目なら何テイクかやればいいし…」
「…すみません、
NGだして何度もとかになったら…」
「そんな心配は気にしないでよ。
こんなシーン何回やってもへっちゃらだからっ」
「……」
「…ぃゃ…へっちゃらではないけど…ハハハ…」
明らかに僕は渇いた笑いで、
緊張が伝わってしまったかも。
「…頑張ります」
「アクション!」
監督の掛け声が聞こえると
僕をベットに押し倒しそのまま覆い被さるグク君。
見つめ合いながら…キスを受け入れる。
すぐに深くなるキス。
キスを繰り返してグク君の手は僕の身体を…
「ッ…」
少しだけ漏れた僕の息。
けどこれくらいは芝居…って思われるかな…
グク君の手が優しく腕や腹を撫でてくるし、
キスが深くてどうしようもなく感じてしまう…
「カーット!OK‼︎」
静かな演技の後に監督の声が響いて、
とりあえず唇を離して固まる僕達。
「…大丈夫ですか」
「…うん…あ…グク君平気…?」
「…はい」
グク君はまた、上から退こうとしない。
何となくバレている気がする。
……なんでこんな時に…僕は…
こんな事、以前は心配すらしてなかったのに。
何故か嫌な予感が当たって反応してしまった。
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