scene.9
《Jiin.cut》
「ジーンさんは
ギャップを役でも発揮してますよね。
ただクールな役より、
ふざけたりよく笑う一面が凄く魅力的です」
「…ありがと。急にどした?
あ、このジュース飲みたいの?はい」
撮影が続く毎日。
今はその合間の短い休憩中、
スタジオの隅でジュースを飲んでいると
グク君が寄り添うように隣にやってきて
僕を褒めだした。
僕が差し出すジュースを口元にやると
そのままストローでジュースを飲んだ。
…冗談のつもりだったけど、
本気で飲みたかっただけなのかな。
真剣に飲むのが赤ちゃんみたいで可愛いけど…
「どうも。あ、けど本当に。
僕、ジーンさんが前のドラマで
'素かな?'ってくらい笑ってたのが印象的で…
憧れてたので」
「ぁーありがとう!
そういえばオーディションで
そんな事言ってくれてたみたいだね?
あ、けどそれを聞かなくても
僕はグク君を推してたけど」
「え、推し…」
「うん。候補者数名の動画チェックして
僕の意見も聞きたいって…グク君推したんだけど、
その時はまだ少し…華奢だったよね?
プロデューサーに苦い顔されたけど…」
「はい、もっと鍛えるって宣言しました」
「うん。逞しくなっててビックリしたし…
ホントグク君で良かった」
「ありがとうございます…」
「いえいえ…こちらこそドラマの為に
オーディションとか鍛えたりとか…
ドラマでも今回激しい内容だし…
いろいろ助かってます…グク君に…」
「抱きしめてキスしてもいいですかっ」
「キッ⁈なんの練しゅッ…」
ぶつかるようなキスをしてきたと思ったら
勢いよく強く抱きしめられた。
僕はジュースを持ったまま立ち尽くしていると、
周りの友人役の仲間達から
クスクス笑い声が聞こえる。
いつか苦情が来ないんだろうか。
休憩なのに、全然休憩してないだろ、とか…
《Gkook.cut》
「お疲れ様ー」
仕事終わり、
ほぼ毎日ジーンさんを見送ってから帰っていた。
「お疲れ様で…」
控え室から出て来たジーンさんに
いつものように声をかけようとすると電話中で
僕に手だけの挨拶が返ってきた。
「……ぅん…ぁぁ…バンクこそー」
あ…前のドラマで相手役の俳優さんの名前だ。
バンクさん…仲良いな…
「うん、じゃあ今から行くねー」
「……」
「あ、ごめん、お疲れ様ー、グク君」
「お疲れ様です」
家に帰ってからひと息つくと
ジーンさんに電話をかける事が多い。
ドラマで心配な事など相談すると
親身になり沢山話してくれる。
…だから毎日だと迷惑だろうし、
躊躇してかけない日も続いていたけど…
「あ、聞こえちゃったんですけど…
電話の相手は以前の、ドラマの方、ですね…?」
「あ、バンクね。
うん、今から一緒にご飯食べにー」
「……」
「グク君、バンクのファンだったりする?
一緒に食事行こうか⁈」
「今日はやめときます」
「だよね、急だし…また今度ね、じゃ…」
「今日も、寝る前に電話していいですかっ」
「う、うん!ま、待ってます!あ、じゃあ後で」
電話、待ってると言ってくれたし、
照れたような笑顔も可愛かった。
…けどあの顔のジーンさんがこれから向かう先は
ラブシーンを以前演じたバンクさん…
撮影が終わっても、仲良いんだな。
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