scene.8

《Jiin.cut》



唇がゆっくり重なり…

慰めてくるように優しい動きをするグク君の唇。

抵抗して逃げたくても、

力が入らずに弱々しくしか動けない。


…さっきからしっかりと抱き締められたまま…



だけどグク君の腰がモゾモゾと動きだした。


「……?」


「……ぁーー‼︎…チョット…

このままでもいいですかっ!」


唇を離して抱き締め直してくるグク君。


「ぇ…このまま?」


明らかに下半身が硬く大きくなって…

僕の脇腹に当たってる気がする。

このままの方がツライんじゃ?って…僕もツライ…


「…すみませ…慰めになってないですね…」


「ぁー…いや?ん、とても慰められた」


「…ほんとですか?

いや、慰めてるつもりがこんなになってたら…

まじで僕…最低…」


泣きそうになったり、強張らせて青くなったり

表情豊かなグク君の頭を撫でた。


「…いやいや…ありがと…ッフ…」


「あ、笑った…ジーンさん…」


「…ッフ…笑ってないよ?だ…大丈夫?」


「だ…大丈夫…です(…おさまれーおさまれー)」


グク君が僕の耳元で囁く声は、

自分に言い聞かせるのに必死みたいだ。

僕は聞こえないフリをして

笑いを必死に耐える。



なんだろこの感じ…

慰め…というかほんと癒される。


あれだけ役に入り込んで滅入っていたのに

すっかりグク君に救われてる。







《監督.cut》



昨日は物語の山場、

ジーン君が沢山泣くシーンを撮ったから

疲れているかも知れない。


今日は明るいのりの撮影、

気分を変えて大丈夫かな。

監督の僕が現場を明るくしないと。


「おはよーございまーす」


俳優陣達の控室に入り、明るく声をかけた。


「おはよーございます!」


「え?あ、おはよう!」


僕よりも明るく元気な返事が

主演ふたりから返ってきた。

まぁそのくらいじゃ驚かないけれど、

ジーン君はグク君の膝に乗っている状態…

朝っぱらからイチャイチャしてる恋人まんまで

親睦の深まり具合に驚いてしまった。


そしてその周りにいる友人役の子達からも

まぁまぁ明るい返事が自然に返ってきた。


「おはよございまーす」


…なんで誰も突っ込まないんだろう。

彼等にはその距離が当たり前…なのか?

周りの子達もすんなり受け入れてるこの光景が。







《俳優仲間A.cut》



撮影の合間、休憩スペースで数人の俳優が寛いだり

台本を読んだりしている中、

グク君はスマホの動画を見ていた。


「あー、それジーンさんの動画。僕もう見たよ」


「ほんとですか。僕まだ見てなくて…

あ、ジーンさんお疲れ様でーす」


そんな中やって来たジーンさんは

当たり前にグク君の膝に座るんだ、と思った。


ジーンさんはグク君が見ている動画が

自分が1人で取材をうけた時のだと気付いた様子。


「あ…」


「どうぞ、一緒に見ます?」


いつものように膝に座らせようとするグク君。


「…それは…」


グク君はジーンさんの腕を引っ張り膝に座らせ、

ジーンさんの肩から一緒に携帯画面を見だした。


「…ちょっとトイレ…」


ソワソワしだすジーンさん。


「え…あと3分」


しっかりジーンさんを捕まえたまま

動画を見ていると…

一際ジーンさんの声が大きくなって

近くの僕にまでしっかり聴こえた。


『グクー!!愛してるよー』


…その動画、僕もジーンさん可愛いなと思ったよ…しかもやり切った感の勝ち誇る顔がまた可愛くて…


「ぅ…言わされたんだよ…」


後ろから見ても赤い耳になったジーンさん。

…動画は余裕そうなのに…そのギャップは…


「…僕も愛してます」


「ぁ…グク君もこの前言わされてたね」


「愛してます」


告白を2回も繰り返したグク君。


「…僕は恥ずかしいのに…」



赤い顔でいじけるように

照れているジーンさんは可愛いけど

グク君の渾身の?告白が、

ただ言わされた番宣と同じにしか

思われていなそうなのが少し残念。


…渾身の告白じゃなくて、

グク君も番宣的のりだったのかな。


いつか本人に聞いてみよう。






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