scene.6
《俳優仲間A.cut》
丸一日、皆と一緒にドラマの撮影をしていた。
そんな中、主演ふたりも暫しの休憩時間になり
僕達がいた休憩スペースへ先にグク君、
その後すぐジーンさんもやって来た。
「お疲れ様でーす」
「疲れたねー」
人数分は置いていない椅子。
先に座っていた僕は、
立ち上がって席を譲ろうとしたけれど
先にグク君がジーンさんに声をかけた。
「ここどうぞ」
「うん、ありがと」
…多分、グク君も立ち上がって席を譲ろうとした
と思うんだけれども…
ジーンさんはとてもナチュラルに
グク君の膝に座った。
少し驚く様子でも、黙っているグク君。
「……」
「ぁっ…こういうことじゃなくて?重い?」
感が良いのか悪いのか、
すぐグク君にジーンさんは確認したけど…
「全く」
グク君の返事は清々しかった。
グク君とジーンさんが
幸せそうに休憩出来るんであれば
そのまま見守る事にする。いつもそう。
《監督.cut》
ドラマの顔である主演ふたりの相性はとても良い。
ふたり並んだだけで、
ドラマの雰囲気が出来上がる。
親睦を深めておいてと頼んだら、
とても仲良くなってくれていた。
そんなふたりなら、少し激しいシーンも…
監督として、とても期待してしまう。
そしてこれから主演ふたりだけの撮影、
グク君が無理矢理キスしたり
ジーン君が思い切り泣いたり
それをグク君が慰めたりする撮影を始める。
まだスタッフがいろいろ準備している中、
部屋のセットに佇むふたり。
…ジーン君は泣く為に気持ちを高めているようだ。
「……」
「集中、ですね…」
そっと寄り添いグク君が話しかける。
「ああ、涙流すのに感情高めとかないと…」
「……」
「グク君は僕の事情とか
泣くのとかまだ知らないんだから
思い切り来てよ⁈そしたら僕思い切り泣くから」
「そうですけど、シナリオですけど、
なんか辛いですね」
そっとジーン君の手をグク君が握った。
「…けどなんか…今思い切り泣くのに
暗い感情沢山思い出してるけど
…後でグク君が凄く慰めてくれるって
分かってるから凄く安心してる」
「はい。安心して泣いて下さい」
さっきより強く握り合うふたりの手。
「…ぁ、ヤバ…なんか今にも泣きそう」
「…ぇ、ちょっと今はまだ泣かないで…
後で、本番終わっても、沢山慰めるので…」
「え?本番終わっても?ありがと」
グク君に優しく笑いかけるジーン君。
その笑顔を見てときめかない人間がいるだろうか。
そしてグク君はあんなに近い距離で…
「…はい。
終わってからも慰めが必要なら
ずっと一緒にいます。なので、今は集中」
'新人'で若いのに
既にこんなに頼れる主演俳優。
僕の目も、ジーン君の目も、
間違いでは無かった。グク君。
彼の気持ちまで伝わる気がするし、
とてもふたりを…というか
グク君を応援してしまう。ドラマの成功の為にも。
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