scene.4

《Gkook.cut》



僕のありきたりな返事、

僕のたわいも無い話が続いた電話の会話。


早くジーンさんも休みたいはずだろうけど

ふと流れる沈黙にさえも

笑ってるような柔らかい息遣いが聞こえるから

睡眠時間が少なくなっても

疲れが逆にとれる気がした。


朝眠いのはいつもだし、

いつもより短い睡眠時間でも

気持ちは晴れ晴れしている。



「おはようございまーす」


共演者やスタッフが沢山いる中、

頭を下げながら挨拶をして進むと

数名の俳優人達の中にジーンさんの顔も見つけた。


「はよーございまーす」


僕に挨拶と笑顔が向けられる。


「…ぃまーす」


「あれ?グク君って朝弱い?」


ジーンさんの質問と同時に

周りの人達の視線が僕に向けられる。


「……」


いつも朝は弱い。

けどジーンさんに会えて弱さなんて出てないはず…

けど、これは見破られて喜んで良いのか…?


「あー昨日電話遅くまで

話し込んじゃったもんね…」


明らかに反応する周りの視線。

僕とジーンさんが電話してる事が

驚きなんだろうな。


僕はジーンさんと、これから誰も入れないくらい

身近な距離を築けたら良い。

そうなる覚悟と意気込みはある。


「…今日もカッコイイですね…」


「おう!ありがと!」



爽やかな笑顔のジーンさん。

僕に下心ありで想われているとは

微塵も気付いてなさそうだな。







《俳優仲間A.cut》



自分も含め演者や、裏方、多くの人々が関わり

期待が高い今回のドラマ制作現場。

これからドラマを作りあげていく上で

雰囲気もヤル気も良い感じで溢れていて

現場は華々しい。


何より主演2人の雰囲気がそうさせているのかな。

みんなからの憧れの存在、ジーンさんと、

フレッシュでみんなから期待されているグク君。


これから全てをときめかす恋が始まる予感。



…ドラマの中だけじゃなく、

現実のふたりもそう見えてしまうのは

僕の気のせいだろうか…


実際、プライベートでも

グク君とジーンさんふたりの進展は目を見張る。


そして割と過激なシナリオのドラマ。

これからキスシーンの確認をするらしいけど、

同じ部屋にいる僕達、俳優仲間にまで

変な緊張が走っていた。



ジンさんグク君が至近距離で見つめ合う。


「えっと…'出てけよ…'」


…ボーイズラブドラマ2回目のジンさんでも

『えっと』とか言っちゃって

あんなに恥ずかしがっている。


「'嫌ならそっちが出てけば…'」


「あー雰囲気出過ぎだから、

もっと喧嘩越しにキツイ感じで強めで!」


ふたりに声をかけて監督が指示をした。

『雰囲気を出して』とはよく現場で聞くけど…

『出過ぎ』だなんて初めて聞いた。


「'出てけよ‼︎'」


「ぁーチョット強いかな」


「'出てけよっ!'…ってぁー…

なんかグク君だと、調子狂うっ」


同じセリフを繰り返し、

頬を赤らめて戸惑うジーンさん。

そんなジーンさんの肩に手を置き、

そっと寄り添って監督にある提案をするグク君。


「監督、監督と3人で確認するのはどうですか?」


「だね。ちょっと皆休憩して来てー」


「えっ!なんかゴメンね皆!

チョット集中して頑張る」


照れながら僕達に謝るジーンさんと、

虚勢のような視線を向けてくるグク君。



そうやって僕達の目が届かない所でも

ふたりはどんどん進展していくんだろうな。


まぁ、笑顔で見送るけど…


主演のふたりと監督を残し、

僕達は部屋を後にした。




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