scene.2
《Gkook.cut》
抱きしめてる。
今、ジーンさんを抱きしめてる。
キス、も、した。
…夢じゃないよな、夢が叶ったんだよな。
これから僕は彼と恋人……の役をやるんだ。
「グク君っ?」
流石にいきなりキスしたし、
暫く抱きしめちゃったし、
腕を解いて、身体を少しだけ離した。
「ぁ…ジーンさんすみません、なんか…」
「いや、ほんと、よろしくね」
「えっ?」
「だって、ほんと慣れないとだもんね、
僕達これをもっと自然に
カメラの前でやらないとだから…」
「…はい」
「それにしても、グク君の親睦の深め方…
独特だけど、嬉しいよ」
「…ありがとうございます」
もともとジーンさんは
人と壁を作るような雰囲気ではなさそう。
そして僕とは親睦は深まった…んだろうな。
今日は全体の顔合わせ、読み合わせの場で、
離れようとしない僕に
嫌な顔せずに接してくれるジーンさん。
そして、自分の分と一緒に僕にも分けてくれた。
「…ジュース飲む?」
「ありがとうございます」
「…お菓子食べる?」
「ありがとうございます」
「…これからセリフ合わせるシーンは
電話で会話だけだから…もう少し離れない?」
確かに飲み物やお菓子をとりに席を離れても
くっ付いて離れなかった。
ずっと同じ仕事だからジーンさんに
くっ付いていれば安心だと思っていたけど…
それにしてもくっ付き過ぎたか。
「…すみませ…」
「あ、ここは'ありがとうございます'
じゃないんだ?」
離れようとしたのに…
ジーンさんは僕に思い切り顔を近づけて
笑い出した。
こんな近くにいる事が許されるなら、
そりゃ離れ難いし…いつも近くにいたい。
《Jiin.cut》
僕と会うのも2日目で、
これから一緒に撮影する仲間達と
初めての顔合わせの場。
緊張しているからか、僕のそばを離れないグク君。
それとも僕と仕事するから
気を遣ってそばにいるのか。
どちらにしてもやっぱり素直だし可愛い子だ。
ついお菓子もジュースも与えてしまう。
「お、親睦深まってるね」
僕達の様子に安心している様子の監督が
話しかけてきた。それに答えるグク君。
「はい、僕、役にのめり込むタイプみたいです」
「いいねー、じゃあジーン君が
好きでしょうがないって感じだ」
「……」
「え?何、否定されると傷付くんだけど」
役にのめり込むなら僕を好きって言ってくれても…
返事をしないグク君に冗談っぽく詰め寄る。
「……好きです」
「わーい!僕も好きーー。
あ!!けど僕はまだだ!
前半は拒否って嫌いな態度取らないとだもんな」
自分で言わせたけど、
僕が役で好きって言えるのはまだ先なんだった。
「いや、もうマスコミに向けて
インタビューとかはあるから仲良くね?」
「そうか、色々取材受けるんだった…」
まだ撮影も始まっていない、
役を演じ始めても無いのに、
取材では仲良くしないといけないんだよな…
まぁ…そんな事も、グク君となら
心配いらない気もする…
この前の親睦の深め方が良かったかな。
…なんて考えながら
自然にグク君にもたれ掛かっていた。
グク君の肩に頭を乗せたまま、
彼の顔を見上げると全く動じていなそうな彼。
緊張しがちな可愛い子は、結構頼れる男の子で…
真顔で監督や共演者の話を聞いている横顔、
男らしい頬や首のラインに見惚れてしまった。
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