24.

 近くのファミレスでゆっくりと食事を済ませ、その後二人は駅に程近い路地裏にいた。


「もう、帰らなくちゃ…」

「くそっ、もうこんな時間か」


 毒づく正樹に、息も絶え絶えな紗江がそこにいた。

 暗い路地裏で何度熱いキスを交わしただろう。別れの時間が近づけば近づくほど、二人のキスは熱くなり、余計に離れがたくなってしまっていた。


「まさ、き…」

「わかってる」


 最後まで言い切らないうちに、正樹は再び紗江の唇を求めた。

 今までで一番長くて熱いキスをし、正樹の唇はやっと紗江から離れたが、正樹は紗江をその腕から離そうとはしなかった。


「明日…」

「えっ?」


 正樹が紗江の耳元で話しかけたが、紗江の意識は熱いうねりの中に漂ったままで、言葉が耳に届いてもなかなか理解するまでにいたらなかった。


「明日はかなり遅くなりそうなんだ。終わるまで待っててほしい、とは言えないんだけど、それでも、紗江に逢いたい」


 熱いキスを交わした相手に逢いたいと言われて拒める女なんているだろうか。数多の女達と同じように、紗江も「私も」と言って、額を正樹の胸に預けた。


「一旦家に帰って、それから家を出ることってできる?」

「えっ?何で」

「この辺りじゃ遅くまでいられる所もそうないし、もし何かあってもいけないしね。紗江が夜遅くでも出かけられるなら、仕事が終わって紗江を迎えに行ってってこともできるかなと思って。…いや、それくらいなら、次の日のほうがいいのか…」

「大丈夫です。何時でも」


 正樹の言葉を遮るようにして紗江は答えた。一秒でも早く逢えるなら、夜中だろうと早朝だろうとかまいはしなかった。


「じゃ、明日、終わったらすぐに連絡する」


 紗江が頷いたのを確認した後、正樹は紗江の肩を抱き、駅の方へと促した。

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