第11話
夜になるとまたおじさんは、またシャッターを閉めてどこかへ消えた。今日の晩御飯はカレーだった。ルーだけいれさせてもらった。初めて食べた辛口は想像以上に辛くてジャガイモをつぶしながら、大事に大事に食べた。
自分より小さい子が、いつの間にか私の横に立っていた。椅子に座っている自分と立っているその子の顔が同じくらいのたかさだった。
「こんばんは」今日は自分から話しかけた。
「お姉ちゃんも家出したの?」
「うん。家出した。
そういう決まりごとにしたの。夏休みになったら、家出をするって」
「決まりごと?」
「少し離れたほうがいいと思ったんだ」
「あなたはなんで、家出したの?」
「私は、いやだったの、掃除機の音が…」
「掃除機のおと?」
「そう。ウィンウィンってなってキーキーってなってガコンってなるあの音。
自分が何を考えているのかを忘れちゃって、何も考えられなくなって、涙が出てくるんだけど、何言ってるのって言われたんだ」
「苦しかった?」
「うん。苦しかった」
「なんで、うちに帰ることにしたの?」
「ちゃんと話を聞いてくれる人がいるってわかったから」
「ここの人たち?」
「うん。みんなここでしかあったことないけど、聞いてくれない人ばっかりじゃないんだってわかったの」
「うちに帰ったら何かあった?」
「何にもなかった。
掃除をしているときは、外に出ることにした。ほかのお手伝いをしっかりとやることにした。自分にもできることがあるってわかった」
「親は何にも言わない?」
「言わないなんてことはないよ。いっぱい、いろんなことをいう。でも、それでいいんだ」
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