第9話
夜になって、おじさんは初日と同じように私をお店の中に残してシャッターを閉めた。
しばらくして、シャッターを開けたひとりの女性がいた。まだ若い。
「こんばんは」そう、その人は私に行って、お店の椅子に腰かけた。
「こんばんは。初めまして」
「初めまして」
少しの沈黙が訪れる。
「質問をするので答えてほしいです」
「わかりました」
「なぜ、家出をしたんですか?」
「子育てにつかれました」
「家出は解決になった?」
「それ自体は何の解決にもならなかったわね。でも、家出したかったの。それだけが自分に与えられた自由な気がしたんのよ」
「すぐに帰った?」
「ええ。ここには2泊しただけ。それぐらいでないと子供のこともあるからね」
「親になってから、家出したんだよね?」
「そうだよ」
「どうだった?」
「子供が家出するよりはずっと楽だったと思う、けどつらくもあったし、不安でもあった」
「2泊したとき、どんな人がきた?」
「おじいさんと、中学生の女の子」
「どんな人だった?」
「おじいさんは、工場で働いていたんだけど人のようにうまくできない自分が嫌で、家出したんだって、中学生の時に。女の子は学校に行きたくなくて、家出したって言ってた」
「どう思った?」
「内容が内容だったけど、人としゃべれるのがうれしかった。自分の話を聞いてそれに対して返事をしてくれるのがうれしかった」
「それだけ?」
「それだけ」
「あなたは子供を何からまもってる?」
「…」
「あなたがいなくなったら、子供はいきていける?」
「今のままでは無理でしょうね」
「なんで?」
「世界のことを知らないからだよ」
「なんで、しらないの?」
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