第43話妹と兄とYANAHAとCisco

 ええっと、1、0、1……

「お兄ちゃん、何をやってるんですか?」


「ああ、ネットワークの構成だよ、ネットワーク部とホスト部の計算がな……」


「まーた面倒なことやってますね」


「ハッキリ言うなよお前なぁ……いいだろCCNAの勉強くらいしたって」

CCNAとは世界最大手のネット機器メーカーの資格だ、受験料が高いことで有名。

 

「えー、あの資格商法にお金払うんだったら可愛い妹に課金しましょうよ!」


 可愛い(自称)妹の相手は難儀する、ああ、もう計算してたの忘れた!


「分かった分かった、相手はいくらでもしてやるから勉強の邪魔しないでくれ」


「むぅ……お兄ちゃんは妹よりそんな機械が優先だと?」


「だってお前この前ウチのwi-fiに繋がんないって文句つけてたじゃん?」


 そう、この妹、昨日ソシャゲの大型アップデートでwi-fiの電波が弱いからとAP(アクセスポイント)のある俺の部屋に飛び込んできた。


「それはお兄ちゃんが相手してくれないから……」


「だからって飛び込んでくるなよ、ルータのコンフィグいじってるところだったんだぞ」


 ちなみにtelnet使用、ロールオーバーケーブルなどというハイソなモノはC841Mにはついてこなかった、WEBGUIでやれということだろう。


「いいじゃないですか、特権モードにも入ってなかったんでしょう? 大体、私はYAMAHAを勧めましたよね?」


「いいじゃんCisco、世界一のメーカーだぞ」


 YAMAHA党の妹とは時々気が合わない、ネットワーク構築時もRTX1210かC841Mかで揉めて結局俺の意見が通った、ちなみに妹の意見が通らなかった理由はお年玉を使い果たしていてお金が無かったからだ。


 そういうわけで俺と妹はCisco対YAMAHAで時々揉めている。


「お兄ちゃん! やっぱり日本人なら日本メーカーを使うべきだと思うんですよ?」


「RTXも最上位クラス以外は中国生産だぞ」


「ぐぬぬ……」


 妹はめげずに反論してくる。


「で、でも! CCNAの教科書にモザイク入りで載ってるルータの例の写真がRTXでしたよ! モザイクも突き抜ける存在感! それがYAMAHA!」


 俺はコイツガCCNAの教科書を読んでるのを知ってちょっと嬉しくなった、なんだ、理解しようとはしてくれてるんじゃないか。


「ほれ」


 俺はノートを一枚破ってメモ書きをして妹に渡す。


「なんですかこれ?」


「このルーターのパスワード、telnetで繋がるぞ」


「いいんですか? 私が設定めちゃくちゃにするかも……」


「まあ実行中のコンフィグいじるだけならいいよ、スタートアップに焼かないでくれよ?」


「はいはい……」


 妹はなんだか呆けたような顔で部屋に戻っていった。


 ――妹の部屋


「よっしゃあ! 私が管理者権限ゲットです! これでお兄ちゃんのアクセスログは筒抜け……いや、不穏なサイトはフィルタリングしてしまいましょうか……」


 そうして妹と俺の戦争が始まったのはまた別の話……

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