第41話妹とOSS

「このコードを書いたのはお兄ちゃんかぁ!」


 妹が俺の部屋へ飛び込んできた。

 どうやら雄○ごっこがしたいらしい。


「なんのコードだよ」


「これですよこれ! お兄ちゃん正気ですか?」


 妹はご丁寧にもノートPCを持ってきており、俺の配布しているフリーソフトのページが表示されていた。


「確かに俺の作ったコードだけどさあ……なによ?」


 ちゃんと動くコードを載せているので問題は無いはずだ。


「お兄ちゃん……一文字変数とスネークケースとキャメルケースをごちゃ混ぜにするのはやめませんか……?」


 コイツ、コーディングスタイルにケチをつけてきた、いいじゃん動くんだし!


「いいじゃん動くじゃん! どうせコードなんて誰も読まないって」


「でもお兄ちゃん、一月前のコメントの一切ないコードを自分で書いたからって修正できないでしょう?」


「うっ……」

 実際昨日の自分が書いたコードが何をやっているのか分からなかったことはある。


「昨日の自分は今日の他人ですよ。もうちょっとわかりやすいコードを書きましょうね」


 はぁ……


 そうして俺は自分で書いたコードのリファクタリングをしている、妹と一緒に。


「お兄ちゃん、そこ何をやってる部分なんですか?」


「ああ、ここはな……」


 そんなわけでペアプログラミングをやっているわけだが……


「お兄ちゃん……アニメキャラの名前を変数にするのはどうかと思いますよ……?」


 なんの羞恥プレイだよ……コードを見られるのがこんなに恥ずかしいなんて……


 そうしてリファクタリングはどんどん進んでいった、sedもAWKもない、IDEバンザイ。


「お兄ちゃん……、ちょっとペース速すぎません?」


「そうか? お前のおかげで大分読みやすくなったが……」


「これではせっかく作ったお兄ちゃんとの時間が……」


「何か言った?」


「いいえ別に一言も!」


 ならいいけどさ。

 実際妹に頼ってからかなりコードに統一感が出てきた。


「ありがとな」

「へ!? なにがでしょう?」


「いや、大分いいコードになったじゃん」


「そうですけど……もうちょっとお話が……」


「話ってコードレビューか?」


「そうでう! お兄ちゃんはもっと人にコードを見せるべきです!」


 こうして俺たちの夜は更けていくのだった……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る