第36話妹とCisco
「お兄ちゃん! ちょっと今日Wi-Fi繋がりにくいんで気をつけてください」
「なんだよ急に怪しげなネット業者に騙されて回線切り替えでもするのか?」
あんまりにもあんまりな返しであるが、ウチの両親はネット関係は知らないので普通に騙されそうである。
「いえ、自宅インフラの置き換えです」
自宅インフラ……
「なんに変えるんだ?」
「はい、ルータをCiscoのものに変えようかと」
Cisco……世界最大手のネットワーク器機メーカー、最大手だが普通ビジネス向けで歯科使われてないし自宅に置く人はめったにいない。
「841Mが中古で安かったので自宅に置こうかと思いまして」
「明らかに個人で持つもんじゃねえだろ……」
明らかに企業用だった、いやそれ「どこのご家庭にもある」やつじゃん。
「ちゃんとシリアルコンソールケーブルも注文済みです!」
自宅のネットワークをシリアルコンソールで設定するのは遠い過去のISDNモデムの地雷くらいまで遡らないと経験者がいないのではないか……
分かるよ? 確かに優秀な機械だしさ、中古だと安いしね。
と、そこでふと疑問がわいた。
「ところで、あれWEBGUIあったろ? シリアルケーブルいる?」
妹は分かってないなあと言う風に首を振り言う。
「そこはロマンですよロマン、黒い画面にカチャカチャ、ターン! ってやりたいじゃないですか!」
「それはそれは、ところで……お前のPCなんだけどRS232Cついてたっけ?」
「え?」
そこは知らなかったのか……
「ほらここに刺すんだよ」
俺の年代物旧PCのシリアルポートを見せて言う。
「え! シリアルだからUSBかと思ったんですが……」
ふう、しょうがない……
「ほら、これ持ってけ」
俺はRS232CのUSB変換ケーブルを渡す。
「いいんですか?」
「ああ、しばらく使ってないやつだしな……使う予定も無いからいいぞ」
妹ははしゃぎながら自分の部屋に帰っていった。
その後、自宅のチャイムが鳴り妹が小走りで荷物を取りに行った。
そうして俺はしばらくPCをシャットダウンしておいた。
それからしばらくして……
「お兄ちゃん! Wi-Fiの設定画面が無いです!」
コイツは結局WEBから設定していたらしい。
それはともかく……
「まさかあのルータにWi-Fi機能があると思ってた?」
「え!? ルータにはついてる物じゃないんですか?」
「アレは業務用だからワイヤレスAPは別だぞ」
「ふぇええ! インターネット使えないじゃないですか!」
べそをかく妹に俺はブロードバンドルーターをカスケード接続しておけとアドバイスしておいた。
結局ルータが増えただけで速度が上がらなかったのは言うまでもない……
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