第35話妹とドクペ

「お兄ちゃん! コーラを飲んでいますね!」


 突然妹が人の飲み物に口を挟んできた。


「いや、そりゃ飲んでるけど……それが?」


「私はもう少し考えてから飲み物を選びます!」


 なんだよいきなり……コイツペプシ派だっけ?


「知的飲料を飲みましょう!」


 ああ……ドクペか……

 なんとなく察した、うん最近アニメに出てたもんな……確かに美味しいけど……


「別にドクペでもチェリーコークでもルートビアでもいいだろ?」


 妹は首を振って否定する。

「お兄ちゃんは分かってないですね……飲み物にはその人の性格が表れるんですよ!」


 トンデモ理論をぶっ込んできた……

「まあ良いじゃん? 日本じゃドクペもコカコーラが作ってんだぞ?」


「それはそれです。お兄ちゃんもドクペに入信しましょう! 今ならなんと可愛い妹がついてきます!」


「ならドクペに宗旨替えしなかったら妹がいなくなるのか?」


「なるわけないでしょう? 妹は兄のバンドル品ですよ?」


 妹様理論マジすげーっす……

「まあいいか、一本飲んでみるか……」


 俺は冷蔵庫にいき扉を開ける、ドクペが1ダースくらい入っていた……

 買いすぎだと思うのですが……


「いくら何でも多すぎませんかねえ……」


 妹がちょっと痛いところを突かれたようだ。


「しょ、しょうがないじゃないですか! 面白かったんだから美味しいって思うじゃないですか! 決して体重を気にしているからお兄ちゃんにも協力してもらおうとか思ってないですよ!」


「そうですか……」


 本音はさておき俺はコーラ派である、ゼロカロリー出ない方が美味しい気がするのは気のせいでは無いと思う。

 さてドクペと言えば……飲んだことはある……非常に人を選ぶ味だった。

 この妹はあまり慣れなかったのだろうか?


 俺は一本取りだしてみる、ちゃんと冷えているので蓋を開けてみる。

 なんというか……子供の時に飲む液体風邪薬みたいな香りがする。


「ほらほら飲んで飲んで!」


「おまえ大学行ったらアルハラしそうだな……」


 ノリが飲み会のコールみたいになっている。

 いや飲み会行ったことないけどね……


 飲んでみると意外と飲みやすかった、杏仁豆腐を溶かして黒くしたような味がする。


「うん、結構いけるな」


 コーラに慣れきっていたせいか他の炭酸飲料の味が新鮮に感じる。


「じゃあお兄ちゃん! 六本ずつで半分こですね!」


 結構な数を飲むことになった、一週間くらいコーラは無しかな……


「おまえペプシとかはどうなの? なんかサブカル好きがコーラの代わりに選んでそうだけど?」


「失敬な! 私をサブカルクソ女扱いしないでください!」


 そうかい、あんまり人を敵に回す発言は控えた方が良い気がするがな。


「それはともかく、これ続けるのか?」


「えっ?」


「いや、だってドクペが好きなんだろ? これがなくなったらまた買うんじゃないのか?」


 俺もたまにはコーラが飲みたい、ドクペも美味しいけどこれからずっとは流石にキツい。


「い、いえ。これからは控えめに買っていこうかなと……」


 どうもこれは思わず買いすぎた結果のようで……

 ――それから一週間後、俺宛にドクペが一箱届いて妹がドン引きするのだった。

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