第33話妹はPCを作りたい
「お兄ちゃん! 納得いきません!」
妹様がお冠である、理由は値札。
そう、PCの値札だ。
「何ですか皆してリモートリモートって! 普通におやすみすればいいじゃないですか!」
コイツはPCが欲しいとショップに来たのだが近年のリモートワークの増加で明らかな型落ち品に「リモートワークに!」というPOPを貼って法外な値段がついている。
多少知識があればこの妹のようにキレそうな価格が貼ってある。
「需要と供給ってやつだわな、時期が悪い」
妹はガルルと文句を言いたくてしょうがない顔をしている。
ちなみに自作をしようにもCPUが新型の発売直後でご祝儀価格がついておりこちらも一式そろえるには辛いお値段がついている。
「陰謀です! コレはア○クの陰謀です! 私がPCを新調しようとしたタイミングを狙っての値上げです!」
「その発言はいろいろマズいからやめろ、自作界の闇に踏み込むんじゃない……」
民間税について踏み込んではいけない、アレは自作業界の聖域だ。
「ぐぬぬ……Ryzenの新型が欲しい……でもこの価格は……」
妹が必死に欲望と戦っていた。
「Core iはどうなんだ?」
「高いです」
身も蓋もない返答だった、まあ確かにTDPも大きくなってきて在りし日のプレスコットを少しだけ思い出すところもある。
「大体殿様商売なんですよ! 金の力で天才開発者をAMDから引き抜いたり! いやまあ逃げられたらしいのでどうでもいいですね」
「誰なのか分かる人もいるからリアルな理由はヤメロォ!」
妹が財布を眺めて危険な発言をし出すのでヒヤヒヤしながら俺がストップをかけている状態だ。
何故コイツはヤバいネタをいちいち挟まなければ気が済まないんだ……
「素直に一世代前のパーツで組んだらいいんじゃね?」
はぁ……とクソデカため息をつく妹。
「お兄ちゃんはロマンをもうちょっと理解するべきです、ベンチの数字が大きければ優越感を感じるのが自作ユーザーというものですよ」
「偏見だ……酷い偏見だ……」
自作ユーザにもコスパ優先の人だっているんですよ! ちゃんと皆に配慮してくれよ……
「お兄ちゃんを自作沼に引きずり込もうという計画が……流石に海外通販はリスクが……」
「俺は出来合の品で十分だと思うぞ?」
「お兄ちゃんはもっとこだわりを持ちましょうよ! 男のロマンって言うじゃないですか! 男の子は戦闘力で相手の強さを計るくらい数字至上主義のはずじゃないですか!」
なんだその偏った男子観は……一昔前の少年マンガじゃねえんだぞ!
「落ち着け、日本は資本主義社会だ、お金が生きていく上で必要なのは仕方ないことなんだ」
「許すまじ資本主義! 今日からコミーになります!」
「まあ共産主義者は技術が微妙なんだけどな……」
愕然とする妹。
「そんな、私はどこで何になればいいと……?」
「諦めて俺の妹やってなさい」
「そうですね……お兄ちゃんの妹をやれるのは私だけですからね、ハイスペックPCでベンチを回すのは大物YouTuberの誰かがやるでしょうしね」
YouTuberに丸投げした後で妹は妹をやっていくことを決めてくれた。
いつかはコイツにハイスペックPCを買ってやろう。
そう決めて俺たちはショップを出て帰路につくのだった。
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