第31話妹とクソゲー

「お兄ちゃん、ちょっと訊きたいんですけど……」


「なんだ?」


「スマホゲーはクソゲーってよく言われてますけど昔はクソゲーは無かったんですか?」


「何でまた急に?」


 コイツは最近ソシャゲにはまっていて結構課金しているようだが。


「実は……ネットでソシャゲはクソゲーばかりと煽られまして……」


「レスバは相手にしないのが一番だぞ」


 荒らしの相手をする奴も荒らし、最近は嘆かわしいことに顔真っ赤で反論する奴が多い……


 ただまあ……あえて答えるなら……


「凄いあったぞ、むしろ今のクソゲーなんて可愛いもんだ」


 妹は不審そうに見てくる。

 そんなにあるわけ無いじゃんと言う顔をしている。


「どの位クソゲーだったんですか?」


 俺はいくつかのクソゲーの特徴を挙げてやる。


「何の説明も無く無限ループ」

「へぇっ?」

「ノーヒントでアイテム前回集が必須」

「えぇ……」

「RPGと書いてあるのに明らかにシューティング」

「……」

「ラスボスが全回復魔法を使ってくる」

「分かりました! もういいです!」


 なんだもういいのか、レトロゲーと言えばクソゲーというくらい、切っても切り離せないものなんだが。


「昔のゲームってやべーですね……」


「昔だから許されたって感じだわな、今やったら速攻修正パッチ配布だろうな……」


 そう、修正パッチ、不具合を発売後修正できる便利なもの、そしてそれが未完成品を平然と『後で修正しよう』という意気込みで発売する作品を出した。

 それがいいか悪いか……なんにせよクソゲー新時代に入ってきていることは確かだろう。


「ところで昔は妹ゲーは無かったんですか?」


 ピシリと体が固まる。

 さあてどうするかな……自慢じゃ無いがSS、PS、DCと妹ゲーはだいたい抑えている、しかしそれを語っていいものか……

 しかしコイツは妹ゲーがあるかどうかしか訊いてない、やったと言わなければセーフだろう。


「あるぞ、結構あった」


 妹の目が鋭くなる。


「で、お兄ちゃんはどの位プレイしたんですか?」


「へ?」


 くっ、コイツ勘が鋭い。

 しかし妹ゲーをやりまくってたと答えるのも兄としての威厳が……


「いや、あったというのは知ってるが詳しくはないな」


「そうですか……」


 乗り切ったと思った直後妹はとんでもないことを言いだした。


「ではお兄ちゃんに妹ゲーの布教をしましょう! これとかどうです? 12人も妹が出てきてゲームオーバーがないので初心者向けですよ!」


 グイグイくる妹に押されつつ、今更プレイ済みですとでも言えない……


「うーん、あんまり興味無いかな……」


 お茶を濁すと妹は何故か満足そうにしている。


「なるほど! つまり、やっぱりお兄ちゃんはリアル妹でないとダメということですね! しょうがないですねぇ」


 まず妹が好きなのは確定事項なんでしょうか……?


 俺が困っていると慈愛に満ちあふれた目で語ってくる。


「正直になっていいんですよ……お兄ちゃんが妹を好きなことは何もおかしくないです! むしろ宇宙の摂理といってもいいでしょう」


 宇宙人に兄妹という概念があるんだろうか? などというどうでもいいことを考えていると妹は畳みかけてくる。


「お兄ちゃんは、私のこと嫌いですか……? 私は大好きですよ……お兄ちゃんを私のものにしたいくらいには……ね」


「俺は誰かのモノになる気はない! 俺は俺だ!」


「お兄ちゃん、人間は一人で生きていけるほど強くはないんです……むしろ導いて欲しいと思ってる人が大半なんですよ?」


 コイツ人類の指導者にでもなる気だろうか?

 妹による妹のための妹の選挙とかやりそうだ……


 しっかし、妹ゲーか……ハマったなあ……アレには素直な妹ばかりで腹黒い妹なんていなかった……


「お兄ちゃん、今何かとても私に失礼なことを考えてませんでしたか?」


「イイエ」


「はぁ……まあいいでしょう。お兄ちゃんには私お勧めの妹ゲーを数本コンプしてもらって感想文を書いてもらいます」


「なんで俺が!」


「あらあら、いいんですかねー? お兄ちゃんのPCの『勉強用資料』ディレクトリをPGPで暗号化してますけど」


「卑怯だぞ! それは……」


「ほほう、お兄ちゃんのやっていた勉強とやらを私にも教えてほしいものですね?」


「ぐぬぬ」


 そういうわけで一週間ミッチリと妹ゲーをプレイするハメになった……

 余談であるが暗号化を解除されたフォルダには何も残っておらず俺は血の涙を流したのだった……

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