第27話妹と部活と兄と願い
「なあ、お前って部活入んないの?」
俺が何気なく訊いてみる、コイツは優秀なので大抵の部活はこなせるはずだ、俺と違ってそのくらいスペックは高い。
「入ってますよ?」
「え? 何に?」
「帰宅部」
俺は呆れてなんとも言えない。
それに続けて妹は言う。
「お兄ちゃんが帰宅部ですし、だったら長く一緒にいられる帰宅部一択じゃないですか?」
そんな理由かよ……
なんとなく俺が縁のなさそうな部活に誘われたのはコイツ目当てか……将を射んと欲すればまず馬を射よとは言ったものだ。
「部活入ってみようとかは……」
妹は即答する。
「無いです、お兄ちゃん付なら別ですが?」
「俺が女子メインの部活に入ってやっていけると思うか?」
「だから帰宅部なんじゃないですか」
ぐうの音も出ない。
俺にもっとやる気があれば……まあ無いもんは出ないわな。
部活かぁ……勉強について行くだけで精一杯なんだよな。
才能があるやつは羨ましいが生憎俺は凡人極まりない、テストの成績も、スポーツテストの結果も平均かそれ以下だ。
「なあ、なんかやってみたいことはないのか?」
年頃の女の子なんだからやってみたいことくらいあるだろう。
「お兄ちゃんとデートしたい!」
本能に忠実な妹様の返答をスルーしつつ考える。
コイツガ部活に入る→俺の時間が増える→友達がワンチャン増える
おっ、いいんじゃないか?
「お兄ちゃんが邪なことを考えてる顔をしているのでこれは部活には入れませんね」
「読心術はやめろ」
流れるように心を読んでくる妹、俺はコイツの考えが分からない、不公平だ!
俺は果たしてコイツの何になれるのだろうか?
家族、恋人、友人、両親、あるいはその全て……
「なあ、お前にとって俺って何だ?」
「全てですね」
予想外の答えだった『お兄ちゃん』と帰ってくると思っていたら予想の斜め上を幾答えだ。
「全てって……?」
「全ては全てですよ、私はお兄ちゃんに全てを捧げますし、お兄ちゃんのものは全て私のものです」
うん、ジャイアニズムだな……
「もう少し夢中になれるものとか見つけないか?」
「私はお兄ちゃんに夢中ですよ?」
ここまで話が通じないとは……
いや、うん。嬉しいんだ、必要としてくれるのは。
だからといってそれでいいとは限らない……世間はあまり暖かくはない。
「俺はお前の全てに値するほど立派な人間じゃないよ」
「それは私が決めることです」
断言する、コイツは将来苦労するな……
ただ……少しでも妹の幸せを願うのなら、俺はもう少し「お兄ちゃん」やっていよう。
「ただの兄」になるのはいつでもできる、でも「かけがえのないお兄ちゃん」であるのは今だけだ。
だからせめて今だけは、コイツの兄でいさせて欲しい……それが俺の欲望で、願い……だ。
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