第25話妹と人権スペック
「お兄ちゃん! 人権が欲しいです!」
突然社会運動にでも目覚めたようなことを妹が言い出したので俺は面食らう。
「えっと……何が欲しいって……」
「人権ですよ人権! なんですかRAM2Gに第二世代Corei3って! 正気を疑いますよ!」
ああ、そっちの人権ね……
「そういやお前PC買ってもらってたな」
先日コイツはウキウキでPCを買ってもらいに行っていた、ちなみに妹は使える家電はテレビが限界だ。
「なんですか起動に五分って! 暇すぎてお茶入れてきたのにまだ起動中なんですよ!」
それはなんというか……ご愁傷さま……
「お兄ちゃん! なんとかしてください!」
無茶を言うなよ、お前のPCの世話をしろと?
「悪いが無料でPCのサポートはしないんだ、嫌な目に遭ったことが何度もあってな……」
ああ、思い出したくもない……『なにがなにもしてないのに壊れた』だよ!
システムファイルをゴミ箱にぶっ込んだりCドライブを削除するコマンドをよく知らないのに実行するなよ!
うぅ……数々のトラウマが……
「じゃあお兄ちゃん! 私に一つ何でも命令していいですよ?」
「は?」
「だから私のPCを直してくれたらその……何でもしてくれていいですよ?」
顔を真っ赤にしながら妹が言う。
シスコンとしては大変嬉しい申し出である。
「はぁ……しょうがないなあ……」
俺は引き出しからドライバーと余っているDDR3メモリとSSDを持って妹の部屋に行く。
「でかい……」
それが妹のPCを見た最初の感想だった。
なんですか寝この鉄の城は……
「なあ、なんでこんなでかいの選んだんだ?」
妹は当然のように答える。
「大きいことはいいことじゃないですか!」
そうですか……
俺はシャットダウンされているフルタワーのPCから電源ケーブルを抜く。
電動ドライバで『ガガガ』とケースのネジを外していく。
パカッと開くと幸いなことに裏面配線ではなかった、裏面配線は見た目はいいけどメンテナンス性悪いからな……
「お兄ちゃん……どうにかなりますか?」
「とりあえずメモリとストレージを変えてみよう」
メモリスロットは四本あるのに一本だけに2Gのメモリが刺さっている。
可哀想なので全部4Gのメモリに交換する。
ストレージはHDDだった、遅いはずだ……
幸いSATAポートが余っていたのでそこにSSDを繋ぐ。
「OSのインストールメディアある?」
「おーえす?」
そこからか……
「一式買ったときにWindowsのディスクも買ったろ?」
「あ! アレですね!」
最悪mediacreationtoolの使用も考えていたのでブートメディアがあるのはありがたい。
妹はディスクを入れたパックを持ってきたのでDVDを入れてブートドライブを先ほど取り付けたSSDを指定してインストールする。
「はえー、早いんですねえ」
メモリとHDDがヤバいほど遅かっただけなのでCPUはギリギリ使えるレベルだった。
ようやくインストールが終わるとあっという間に初期設定画面が出てきた。
「凄いです! これからいつもこんなに早いんですか?」
「ああ、よっぽど変なことしなきゃ大丈夫だろう」
妹が初期設定をしながら俺に聞く。
「お兄ちゃんはなんでPCに詳しいんですか?」
俺は妹に出されていた紅茶が喉に詰まった。
ゲホゲホ
「そ、それはあれだ! いろいろ作るのが楽しいぞ」
兄である手前肌色多めのサイトが見たかったからとは言えない。
気心の知れた友達ならともかく妹にする話じゃない。
「ありがとうございます! じゃあ……その……お礼を……」
なんだか顔を赤くしているようだが俺には一つコイツにやってもらう必要がある。
「なんでもって言ったよな? はいこれ」
俺が渡した本は『初めてのWindows10』だった。
「それで基本操作覚えといて」
はじめに人に聞くクセがつくといつでも聞いてくるからはじめが肝心だ。
と言うわけで妹には参考書を数冊渡し「自学自習」をさせるのだった。
それから数週間後、自宅にMITMサーバが置かれ、えっちなさいとに検閲がかかったのはまた別のお話……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます