第24話妹と管理者

「じゃーん!」


 妹がタブレットをドヤ顔で見せてくる、コイツガがじぇっと自慢をするのはいつものことだ。

「今度はそれ買ったのか? よく金が続くな?」


 妹はどこぞのバカが株を誤発注したのを掴んで結構な金を持っている。

 だからまあ……ガジェットを買うこと自体は問題ない。


「お兄ちゃん! 反応薄いですよ! 毎年スマホを買い換えてるんだからこういうのも興味あるでしょ?」


 俺が買い換えているのは安いandroid端末だしタブレットならiPadを持っている。

 なので別にあまり興味は無かったりする。


 ぱっと見は普通のタブレットだが……

 ああ、そういえば最近出たんだっけ。


「fireか、いいじゃん」


 妹は自慢げに……というか自慢をする。


「そうですよ! 発売したてのタブレットが手に入ったんです! コレは嬉しいでしょう?」


 羨ましくないこともないが……


「まあ俺iPad持ってるし」


 妹は悔しそうな顔をする。


「ずるいじゃないですか! iPadでガジェットマウントから下りるのはずるいです!」


 そうは言ってもなあ……指紋認証も顔認証もない、ストアも専用のものしか使えないものを羨ましがれと言われましても……

 俺の使い方ならiPadで十分足りているし……


「まあ人の好みはそれぞれだからな」


「上から目線ずるいですよ! 私がandroid信者なの知ってるでしょう! もっと羨ましがって! 妬んでよ!」


 我が家の妹様は無茶苦茶をおっしゃる。

 それは価値基準が違うのにこっちに合わせろということだ。

 1メートルと1キロのどっちが大きいか比べられないように全く別のものだ。


「だいたいお兄ちゃんはなんでAndroid使わないんですか? 便利でしょう?」


「いやまあ便利だけどさ……」


 Androidは便利である、確かにそうだ。

 しかしどうにも制作元の個人情報を換金するような商売が好きになれないってだけだ。


「どうもね……root取らないと制限の多いソフトは好きじゃないんだ」


「rootってなんですか?」


 なんとこの妹、Androidを使っているのにrootを知らないようだ。

 懇切丁寧な説明は非常に面倒なのでぞんざいに答えよう。


「管理者のことだよ、rootユーザになるといろいろできることが増える」


「へー、Androidにそんな機能が……」


 妹はそうして部屋に帰っていったが俺は思いきりフラグを立てたことに今は気付かなかった。


 ――翌日夜


 何故か今日は鬼のようにメッセージを送ってくる妹が一通も送ってこなかった。

 昼休みに教室に乱入したのはいつものことだがどうかしたのだろうか?


「おにーーーちゃーーーーーーん!」


 グズりながら妹が部屋に飛び込んできた。


「寂しかったですよぉ、スマホ直してください……」


 それでだいたい察した、大方rootのROMを焼き損ねたのだろう。

 Androidを使うなら一度は通る道だ(偏見)。


「見してみ?」


 妹のスマホを受け取りbootloaderできどうしてみる、ここが死んでたらどうにもならない。

 最低限の起動はするのでさっさとファクトリーイメージを焼いて直す。


「ほれ」


 妹はポカンとしながら受け取ってログイン画面を見ている。


「お兄ちゃんはiPhone信者のくせにAndroidに詳しいですね?」


「まあアプリとか公開してるしな、開発用エミュレータくらいは使うからな」

「お兄ちゃんのアプリ! 気になります!」


 マズい、失言だった……

「いやーもう非公開にしちゃったからなあ……無理かな」

「むぅ、気になるじゃないですか……はっ! まさかギャルゲでも公開してるんですか?」


「しないしない、だいたい俺、絵描けないもん! それに今のAndroidの主流はkotlinだろ、Javaでくんだソフトなんか見ても意味ないから!」

「ふーん、じゃあ探してみます、この世の全てがそこに置いてあるんですね!」


「置いてねえよ! なんだ他所の財宝は!」

 

 そんなやりとりの後、嬉しそうにスマホを握り部屋から出て行く妹。

 いいことしたかな? と思っていたら妹が俺が作ったアプリを発見して☆5をつけ、それについて延々といじられるのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る