第18話妹と謎資金
ある日、俺と妹はデートをしていた、何故こうなったかについては語らないがざっくり言うと圧力である、もちろん妹からのだ。
「お兄ちゃん、楽しいですねえ……お兄ちゃんと一緒にいるところをクラスの皆に見られるかもって思ったらゾクゾクしますよ! この背徳感! 素晴らしい!」
何やら大分怪しい発言をしているが俺たちは未成年だし飲酒もドラッグもしていない、これが妹の素面だから恐ろしい。
「あっれー? お兄ちゃん、楽しくないんですか? 楽しめないんだったら……」
「いや楽しい! 楽しいぞ! 地上の楽園感まであるな!」
「何か含みを感じますがまあいいでしょう、とにかくお兄ちゃんは今日一日私のものなんですからね! ちゃんとそこをわきまえてくださいよ!」
なんでこうなったかって? 疑問に思われる方も多いだろうがそれは俺の恥をさらすことになるので勘弁願いたい……
現在はゲーセンで遊んでいるところだが知り合いは全くもって出会う気配がない、どうやらそれが妹には不満のようだ。
「まずゲーセン最近人が少ないからな、ただでさえ少ないのにピンポイントで知り合いとは会わんだろう?」
「むぅ……しょうがないですね、今日は写真撮って帰りますか……
俺たちはゲーム機で写真を撮って帰途につく……と思った……
「あれ? お兄ちゃん、なに帰ろうとしてるんですか?」
「え? だってもう夕方だぞ」
建物から出てみるともうすでに空が茜色になってきている、そろそろよい子は帰宅する時間だ。
「なあ……どこへ行くんだ?」
妹はふふんと鼻を鳴らして自慢げに答える。
「それはもう夕ご飯に決まってるじゃないですか? あ、お母さん達には夕食不要って連絡しといたからここで帰ったらお兄ちゃん明日まで食事無いですよ」
用意周到な相手をするのはとてもキツい。
「夕食くらいならいいか。それでどこで食べるんだ?」
「じゃあ行きましょう! 善は急げって言いますしね」
そういうわけで妹に連れてこられたのが……高級そうなレストランだった。
入ってそうそう手厚い歓迎を受けたので少し……いやかなりびびった。
「なあ……ここ高そうなんだけど、大丈夫かなあ?」
「大丈夫です! いつお兄ちゃんと来てもいいように時々来てますから、対のそのときが来たって感じですかね。あ、奢りますから料金の心配は要りませんよ?」
「そうか……ちなみにいくらだ? 多少は出しても……」
俺は伝票を見ようとするが妹に止められる。
「まあせっかく気分の出る夕食でお金のことを持ち出すのはよくないですよ? 多分お兄ちゃんが見たらご飯がおいしくなくなりそうな金額ですからね」
気前がいいのも結構だが兄としての威厳とかどうなるんだろう?
「食事なんておいしいかおいしくないかだけでしょう? 料金で味は変わらないですからね。まあお兄ちゃんが私に借りを作りたいなら喜んで教えてあげますけど?」
「お前の金の出所が気にならんでもないが美味しいから気にしないことにするよ……」
妹は堂々と食事をしているがコイツはよくこんな店に来るんだろうか?
ギリギリドレスコードが有るか無いか微妙そうな店だが高校生が入れるんだからそれほどの値段ではないのだろう。
「なあ、今度は俺がごちそうするよ、流石にこのくらいの店は無理だけどな」
その何気ない一言に妹が凄い勢いで食いついた。
「お兄ちゃんがご馳走! マジですか? それなら是非手料理を!」
手料理ってそれじゃあ借りを返した気がしない提案なんだが。
「いやもう少し高い店でも大丈夫だぞ、流石にそのくらいの金……」
「いえ! 私はお兄ちゃんの手料理を所望します! 是非にお兄ちゃんが私のために作ってください!」
「いいのかよそれで……気を遣わなくても……」
そういう俺に妹は持論を説く。
「いいですか? 私はお兄ちゃんが好きです、そんなお兄ちゃんが『私のために』作ってくれるんですよ? この店は客全員のために料理を出してます。それよりも『お兄ちゃん』が『私のためだけに』作ってくれた料理の方がいいのは当然でしょう!」
妹からの愛がとても重い、地球の重力よりも重い気がする。
「まあそれでいいならいいよ……正直借りが大きい気もするがな」
妹はニヤリと笑って言う。
「お兄ちゃんが借りを感じてくれるなら大変結構ですね! 分割で返してもらいますから」
ちなみにお金は『違法ではない』手段で稼いだらしい……
それは疑問ではあるがそこを追求するのはあまりにも怖いものがあった。
こうしてしばらく妹の僕となるのが決定したのだった。
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