第15話妹とサイバーセキュリティ
「お兄ちゃん! 大変です!」
今日も妹が俺の部屋に飛び込んでくる、いつものことなので慣れっこだ。
「で? 今日はどうした?」
「私の貯金が危険で危ないんです!」
「落ち着け、お前の日本語が危ないぞ」
ぜえぜえと一通りまくしたてた後落ち着いてスマホを差し出してくる。
「なんかネットバンキングがハッキングされてるって……」
チラとスマホを見る、なるほど確かにネットバンキングのページが表示されている。
ただ……
「それ、偽サイトだぞ?」
「何でですか! ほらちゃんとデザインされてるじゃないですか!」
「アドレスバー見てみろhttpで始まってるだろ? まともなサイトならhttpsで始まってる、最も最近は無料でhttps化するサービスもあるからそれだけじゃ判断できないが……それすらしてないのは問題外だ」
スマホには某大手都銀のサイト「のようなもの」が表示されている。
「なんでハッキングされてると思ったんだ?」
「はい……不在通知のメッセージが届いたので……」
「見せてみろ」
妹の持っているスマホには不在通知が届いている。
「まず宅配業者に電話番号教えてないだろ?」
SMSは電話番号で送るメッセージだ、こういうのは手当たり次第送ってきている。
「はい……何で分かったんでしょう?」
「さあな……ただ電話番号が溢れそうになってるし適当に入力して送ってるとかじゃないか?」
「なんとかならないですか? 不安です……」
「ふむ……なんとかねえ……」
俺はPCを持ってきて妹のスマホに表示されているドメインにアクセスしてみる。
「お前こんなのに騙されてんのかよ……」
謎の中国語が表示されるだけの明らかにおかしいサイトだった。
ひとまずドメインを取っていると言うことでwhoisを引いてみる。
捨てアドか……そりゃそうだ……l
当然銀行の法人名義ではなく代理登録がされていた。
放っておいても問題ないけど……
ふと興味がわいてPCをVPNに接続しpingを送ってみる……帰ってきた……
俺はあまりのお粗末さに呆れながらWSLを起動してviでシェルスクリプトを書く。
数行のシェルスクリプトが組み上がったのでVPNのキルスイッチを有効にしてスクリプトを実行する。
手元のスマホでTor経由でさっきのドメインにアクセスしてみる。
リクエストへの応答は返ってこなかった。
「ほれ、なんとかしたぞ」
妹にさっきのサイト見てみろと言っておく。
「あの……お兄ちゃん……繋がらないですね?」
「だろうな」
「お兄ちゃん……何をしました?」
「さあてね……ICMP floodの対策もしてないタコな管理者にお仕置きをしただけだよ」
「大丈夫ですか?」
「だいじょーぶ。どーせそんな後ろ暗いことやってる連中が訴えられっこないから」
妹はなんとか納得した様子だった。
「ときどき、お兄ちゃんのことが怖くなりますね」
「俺は何でも出来るお兄ちゃんだぞ? そんなのチョロいチョロい」
「ふふふ……なんか安心しました」
「ところで……不在通知が気になるってなんか通販してたのか?」
俺の何気ない問いに妹は「ギクッ」と固まる。
「何を通販していたのかなぁ?」
「いいいいじゃないですか!? 細かいことですよ!?」
「まあ深くは訊かんから今日見たこと言いふらさないようにな?」
「はいっ! 二人だけの「秘密」ですね!」
「そんな大それたもんじゃないが……」
そうして数日後、妹が届いたWEBカメラを兄の部屋に仕掛けたことについぞ兄は気付かなかった……
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