第13話妹はスマホを直して欲しいようです

「お兄ちゃん、スマホが壊れちゃった! なんとかしてください!」


「また唐突になんだよ……水にでも付けたか?」


 一応妹のスマホは防水仕様なのでちょっと浸かったくらいなら平気だががっつり沈むとヤバイものはヤバイ。


「違うんですよ! 私は何もしてないんです!」


 ああ、コレは絶対何かやってるな……とはいえ可愛い妹の相談なので訊いてみようか。


「何がどうなったんだ? ハードウェアの故障なら俺にもどうにもできないぞ」


「コレです、なんか起動しないんですよ! 私は何もしてないのに!」


 そう言って妹の刺しだしてきたスマホは起動画面だった……企業ロゴが柴原移った後……もう一度起動ロゴの画面になった。


 どうやらブートループみたいだな……結構めんどいんだよなコレ……


「とりあえず原因があるはずだから答えてくれ、何をやったんだ?」


 俺はなるべく責めるような言い方でなく原因を教えてくれと言う。


「ええっと……なんかアップデートがダウンロードされました、更新してくださいって言うのが出て……」


「オーケー、大体分かった」


 まーたOSの配信でバグったのか……最悪PCからの復旧が簡単なiPhoneと違ってAndroidは面倒なんだよな……


「直りますか?」


「多分な、ただ、データは諦めろ」


「うぅ……お兄ちゃんとの思い出が消えちゃうんですか?」


「しょうがないだろ、こうなったらワイプしてダメならROMを焼くしかないんだから」


 妹は泣きそうな顔で俺を見る。


「だってお兄ちゃんの思い出の写真が……」


「はぁ……写真くらいまた撮れば良いだろう?」


「うぅ……私のお兄ちゃんコレクションが……」


 諦めろと言いかけて俺は気付く。


「あれ、俺お前にスマホで撮られた事ってほとんど無くないか?」


 コイツがスマホにしてから写真投稿サイトにアップしたいと言ったのを諦めてもらってからほとんど俺は写真を撮られた覚えがない、そんなに大事な写真あったっけ?


「せっかくお兄ちゃんが寝ている隙に隠し撮りをしたのに……」


「おいコラ、隠し撮りか?」


「違いますよ! 堂々と撮ってます! たまたまお兄ちゃんが寝て至ってだけです!」


 コイツ開き直りやがった。

 まあいいか……この様子ならバックアップは取ってないだろうし盗撮写真を消す良い機会だ。


「じゃあ貸してみ? 初期化しとくわ」


 俺は妹からスマホを受け取る。


「明日の朝まででいいか?」


「日課のお兄ちゃん写真が撮れないんですね……しょうがないです……」


 コイツまさか毎日撮ってたの!? 怖いんですけど!


 そうして妹は自信の部屋へ帰っていった。

 さてと……直しますかね。


 俺はPCを起動して公式のROMイメージをダウンロードする、幸い俺に機種を決めてくれと言ったのでグローバルモデルをおすすめしておいた、おかげで公式が初期ROMを配布してくれている。


 ROMイメージをダウンロードするとPCとケーブルで繋いでブートローダーで起動する。

 素っ気ない画面が出てくるのでとりあえずwipeを選択してスマホを初期化する……ダメか……

 薄々分かっていたが案の定起動時のブートループは解決しなかった。


 やれやれ……とは思いつつもう一度ブートローダーで起動してPCからfastbootコマンドでROMを焼き込む。


 フラッシュが終わると普通に起動してみる。


 メーカーロゴが出て……無事初期画面になった、念のためしばらく待ってみるが再起動する気配はない、一丁上がりだ。


 俺はスマホを充電しながらゆっくり安心して寝た。


「お兄ちゃん! 直りましたか?」


 翌日、目の前に妹の顔が合って飛び起きた。


「なんで当たり前みたいにいるんだよ! 近いって!」


「だってお兄ちゃんの写真を撮れないですし……せめて心のアルバムに焼き付けておこうと思って……」


 時計に目をやる、午前五時だ。


「早くね? まあいいや、直しといたからアカウントログインすれば使えるぞ」


 妹は俺の机の上で充電されているスマホを手にして電源を入れてみる、昨日直したとおり再起動はしなかった。


「流石ですね! お兄ちゃんはスマホの大先生です!」


「うん、その表現は傷つく人がいるからやめような?」


 そうしてしばらくwi-fiからOSのバックアップをして使えるようになったらしい。


 そこまではよかった、最後に妹は不安になる一言を残して部屋から出て行った。


「うぇへへぇ……流石クラウドですね……意識しなくてもバックアップは取れてます……」


 どうやら俺の安眠はしばらく無いらしいことが分かったのだった。

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