第4話妹はお兄ちゃんを養いたいようです
俺はさっきまで勉強をしていた。
そう、過去形である、なぜなら今現在妹とゲームをしているからだ。
「それっ! このコンボでいけっ!」
ドガッと重い必殺技を受けた俺のキャラが吹っ飛んで試合終了だ。
2ゲーム先取が勝利条件なのでこれが3ゲーム目、要するに試合終了だ。
「負けたか……んじゃ勉強するから」
「何言ってるんですかお兄ちゃん? もっと遊びましょう!」
「お前な……受験生に一体どれだけ相手をさせる気だよ……」
すると我が妹は何故か動揺する。
「いや……だって……お兄ちゃん最近遊んでくれないし……私の夢が……」
「なんだ? こうして遊んでるだろ、しかも毎日。俺も成績ヤバいんだよ」
それを聞くと何故かコイツは嬉しそうに俺に畳みかける。
「そうですか! なら浪人しましょう! 大丈夫! バッチリ私が勉強を手取り足取り教えますよ!」
コイツはなにげに勉強ができる、多分傾向と対策なんてやらなくても普通に受験に通るくらいには頭がいい。
「俺は凡人なんだよ、予習復習が欠かせないの? 分かったか」
「それはもうよく分かってますよ、でもお兄ちゃんと一緒に大学に通いたいじゃないですか!」
一緒にって……俺にあわせると大分グレードが下がると思うんだが……
「あのな、才能の無駄遣いはよくないぞ、ちゃんと高みを目指せ」
すると不満げに反論する。
「私の想像する高みってお兄ちゃんの正妻なんですけどいいんですか?」
微妙に嬉しそうに言う、嫌そう言うことじゃないだろ、将来の夢に「お嫁さん」って書いてるようなもんだぞ。
「もうちょっと堅実に生きなさい」
「私は完璧で何でも出来ちゃいますから、お兄ちゃん一人くらい軽く背負って生きてけます!」
元気よく人をダメにする思想をしている。
というか俺がニートになったらどうするんだろうか?
「それはもう世に出さず私だけのお兄ちゃんとして養います!」
「心を読むのはやめてくれないかなぁ!」
「ふっ……妹たるものお兄ちゃんの心を読む力は簡単に手に入りますよ」
何その超人設定……こわっ……
「まあいいや、俺は堅実に生きたいんで勉強するぞ」
コイツはそれに反論してくる。
「果たして妹と一緒に入学できるというチャンスとストレートで合格すること、どっちが大事でしょうか?」
ダメだコイツ……
「ほら、俺だって生きてれば生活費かかるんだから……金が無限にあるんじゃないから迷惑はかけられないだろ」
キョトンとしたように答えが返ってくる。
「いえ、皆さん私が学費と生活費もつっていったら浪人歓迎してましたよ?」
「えぇ……」
俺の信用はいずこへ……
というかどっから金が出るんだろうコイツ。
「私には先見の明がありますからね、先物信用バッチコイですよ!」
「頼むからやめて! それ破産フラグじゃん!」
投機はやめようね、アレはお金が余ってる人がやるものだよ!
「ふっ……私にかかれば市場の未来を読むなんて余裕です! まあお兄ちゃんを一生養えるくらいはあるんで気にしないでください」
我が妹はとっても頼りになるようだ。
「あのなぁ……俺は自分の力で生きていきたいの? わかる?」
「でも人は一人で生きるものじゃ無いって言いますよ?」
「突然の正論はやめて!」
正論は正しいが人を救うものじゃないんだよ!
薄い胸を張る妹を見ながら、かっこいいヒモと言う言葉が何故か思い出されるのだった。
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