第8話 被害報告は勇気をもって言いましょう
とられた荷物が置いてある部屋は案外簡単に見つかった。
方向はドンピシャ、迷うことなくまた奇跡的にモンスターや『彼女たち』と会わずに済んだ。
そしてさらに喜ばしいことにその部屋の近くにセーフティーエリアがあった。
セーフティーエリアとは
ダンジョンやワールドマップに点在するエリアでモンスターやPK(Player kill、プレイヤー同士の殺害行為。このゲームでは自由に行うことができる)にあうことはない。
そして大事なこととしてここでセーブ、ログアウトができる。
ここ以外でセーブはできず、他でログアウトすると無防備のままダンジョンやワールドマップにいるのでかなりの幸運でもない限り待っているのは確実な死である。
さらにセーフティーエリアではスキルの獲得や振り直し、武器の点検・作成・強化、体力や状態異常の回復など様々なことができる。
ここでしばらく休み、アイテムの整頓や武器の点検をしていた。
現実世界でかなり時間が経っている頃だろう。
そろそろ戻らないとまずいかもしれない。
これ以上は集中力が続かないし、現実世界でやばいことになりそうな予感がする。
この状態ではパフォーマンスは落ち、最悪ゲームオーバーになるかもしれないということは頭ではわかっている。
ふうとため息がでる。
ここの情報収集が不足していた。
神を倒せる可能性がある、それだけで喜び勇んでろくに準備もせず、ここまで来てしまった。
どのようなモンスターが出現するのかどのような罠があるのか、その重要な情報を集めるのを手抜きにしていたのは明らかに愚かな失策だった。
あの罠も事前情報があれば十分に防げたものであった。
……不思議なのは、あれは十分記憶に残る罠だと思う。
情報収集が不足していたとしてもあの罠の情報が一切手に入らなかったのは不思議であった。
最近できた罠だろうか?
たぶんあまりに無様なゲームオーバーだから誰も話さなかったのかも。
十分あり得る。
こんな死に方はあまり言いふらしたくはない。
自然と再びため息が出る。
気持ちの焦りだけで進むのは自殺行為だ。
そう決めるとセーブをし、躊躇いがちにログアウトを選択する。
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