第7話 美人局に気を付けて 2

 武器を持った敵が5人。


 囲まれる前に槍を構えた黒髪の女性へと朦朧とした意識を叩き起こしながら間合いを詰める。


 構えから見て、たぶんこいつが一番強い。


 黒髪女性が槍を突き出してくる。


 ふらつく身体で何とかそれを避ける。


 槍を引き戻す前に間合いを詰め、喉を切り裂く。


 黒髪女性の首から大量の真っ赤な鮮血が噴水のように飛び出す。


 他の女性たちはその光景に一瞬怯んだ。


 構わず近くの一人に近づきその胸を突き刺し押し倒す。


 まだ甘ったるい匂いの効果が残っているのか身体がふらつく。


 時間はかけられないが、女性たちはさきほどの威勢はなく、恐怖が徐々に支配していっているのが分かる。


「…っ! ひ、怯むな!! 奴は立っているので精いっぱいのはずだ!」


 青色の髪の女性が叫ぶ。


 ご明察の通り痛みのおかげで意識を保っていられるのだが、それを悟らせるわけにはいかない。


 青色の髪の女性へ向け一気に踏み込み、その首を高々に跳ね飛ばす。


 狙いすましたように大仰に雄叫びをあげる。


 恐怖を煽るためにだ。


「ひい!」


 一人恐怖に耐えきれず逃走を始めようとした。


「あっ! 待って!! 逃げちゃダメよ!」


 もう一人が振り返って必死に呼び止めようとしたが、それは致命的なミスだ。


 制止しようとした女性の背中に短剣を刺し、顎に手をかけ思いっきり首を捻じり折る。


 彼女は糸が切れた人形のようにその場に倒れた。


 最後の一人は仲間の惨状に振り返りもせずに逃げ去った。



 僕は集中が切れ、踏ん張れずに地面に倒れ込む。


 不意を突いた戦いであったため何とかなったが、これが最初から敵も全力でかかっていたら無事では済まなかっただろう。


 おそらく残った彼女たちは罠で蕩けきった咎人を抹殺する役割を担っていたようだ。


 逃げた女性を追う必要はないし、そんな余裕も体力もない。


 援軍が来る前にさっさとここから退散しよう。


 立ち上がり歩こうとするが、フラフラと左右に上体を振れながらなんとか扉まで向かった。


 まずは武器と荷物を回収しないとこの部屋に連れていかれる途中までは彼女たちが持っていた。


 正確な道は分からないが、大体の方向はわかる。


 僕は息も絶え絶えに扉を開く。


 わかっていたことだが、一筋縄ではいかなかそうだ。

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