第4話 進む道は戻るには遠すぎて
どうせたいしたことにはならないと高をくくり、先に進むことを選択した自分が恨めしい。
最初小雨程度であった雨は刻一刻と強くなり、今では土砂降りとなっている。
HP減少などの状態異常はないが、体温は冷たくなり身体の動きが鈍くなる。
こんなところまで再現されなくてもいいのにと心の中で悪態をつく。
都合よく雨宿をする場所もなく仕方なしに冷たい雨を浴びながら先へと進む。
その間もモンスターは容赦なく襲ってくる。
足場と視界の悪い中、モンスターを撃破していく。
このゲームでソロプレイは自殺行為と呼べる。
多数の敵に囲まれたときや厄介な状態異常にかかった場合一人では対応が難しい。
最悪そのまま呆気なく死亡することがある。
最初のころは何度もそれで死んだ。
しかしソロプレイに拘った。
他人は信用できない?
それもあるが意地、僕一人の力で決着をつけたいという意地があった。
僕自身で決着をとかっこいいことを言っているが恐らく本質的にはガキのしょうもないわがままと同じか、うじうじと情けなく振られた男がしがみつく未練がましいものと同じなのかもしれない。
ソロプレイに拘ったおかげで手前味噌ながらプレイヤー間ではかなり上位のほうに入ると思っている。
スキルもアイテムも如何な不意打ちを受けようと対応できるようにしてある。
ソロプレイで培った“腕”とソロプレイという物珍しさでプレイヤーの中で知名度が上がっていった。
そのおかげであの『遠征』に参加することとなった。
ある神を倒すために500名ほどが参加した大規模な『遠征』。
確かな腕を持ったプレイヤーたちが揃ったこの『遠征』は誰もが成功すると確信していた。
しかし結果は壊滅というプレイヤーたちに絶望を与えるのに十分すぎるほど無残な結果となってしまった。
その時、僕も他プレイヤー同様、尻尾巻いて死に物狂いで逃げだした。
もう神を倒すのは無理だとも思ってしまった。
しかしそんな絶望の最中、ある情報を入手し一筋の希望の光を見出した。
その情報から僕は12神の一人、アフロディーテが支配する都市、『アクレシアポリス』に向かっていた。
あの時の恐怖が再び呼び起こされるが、今更尻尾巻いて逃げだすには今まで時間を無駄にしすぎた。
自らを奮い立たせるように目の前にいるモンスターの頭部に大剣を叩きつける。
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