第一章 女神の讃美歌
第3話 設定は済みましたか?
ようこそ、『Play Scanning Brain』 通称PSBへ。
このPSBは皆さまの脳へと間接的に電気信号を送り、神経回路を刺激することで皆様をゲームの世界へと招待いたします。
現行のVRでは到達することができなかった匂いや音、味、肌触りまで、現実との一切の相違なく感じることができます。
PSBの世界に入る前に初期設定の登録をお願い致します。
まずはご自身のプロフィールを作成しましょう。
プライバシーに関することは極力載せないほうがいいでしょう……プロフィールを作成できましたね。
次は言語設定です……日本語で登録します。次はインターネット環境の設定です……では次は……
お疲れ様でした。
これで初期設定は終わりです。
初期設定は起動時のホーム画面でいつでも変更可能です。
さあ! これからPSBの世界へと向かいます。
どうぞ心ゆくまでお楽しみください。
近年稀にみる大不況により経営が傾いていた大手ゲーム会社『Play Scanning』が起死回生を狙い、2025年に発売されたのが『Play scanning brain』 通称PSB。
従来のゲームの概念をことごとく破壊する斬新性、機能、デザインの数々に人々は魅了され、『Play scanning』は全盛期をはるかに超える収益を上げた。
PSBの発売とともに数々のゲームソフトも販売された。
その中の一つ、マイナーゲーム会社『レッドプロ』提供の『ジ・ハード~咎人たちの聖戦~』は驚異的な人気を誇った。
そのゲームの特徴は病的なまでの難易度と自由度であった。
プレイヤーは真っ先にこの世界に入るためもう一人の自分、“咎人”を作る。
“咎人”はこんなところまで必要なのかと思うほど身体の細部まで設定することができ、テレビや漫画に出てくる人物そっくりに作ることが可能だ。
しかしここで注意してほしいことがある。
それは一回ゲームオーバーになってしまったら同じ“咎人”でコンテニューはできない。
死んでしまった“咎人”はその場に留まり、二度と使用はできない。
プレイヤーはまた一から新しく“咎人”を作らなくてはいけない。
この時、前の“咎人”と同じ外見を作ることはできない。
だからこそ不必要と思われる細部へのこだわりがここで生きるということをプレイヤーはうんざりするほど思い知らされる。
持っていた装備・アイテムは死体が所有しており、回収したいならばその死体の元まで向かわなければならないがおすすめしない。
なぜなら死体のところに到着する前に死ぬか到着しても他の“咎人”にすでに回収されているかのどちらかになるからだ。
死ぬとすべてを一瞬で失くすことになる、ゆえにこのゲームはプレイヤーの間で“死にゲー”と揶揄されている。
しかしそれを補うに足る自由度がこのゲームにはある。
それは一つ、スキルにより自分の想像通りのアイテムを作ることが出来る。
ただし死者蘇生のようなものや戦闘機などの兵器とかは不可能だが。
それは一つ、フィールド、面積はだいたい日本列島と同じくらいで目に入る場所はすべて行くことが可能。
それは一つ、広大な世界を冒険するのもあり、NPC つまりNon Player Characterをまとめ上げ、自分の国を作ることもでき、ひたすらプレイヤーキルしてもよい、のんびりスローライフも可能などなどこの圧倒的な自由度があるからこそ爆発的に人気になった。
このゲームを始めるとき、プレイヤーはこの世界の成り立ちをざっくりと教えられる。
それを簡単にまとめると
12人の神が大陸を支配しており、人々は圧政の中生きていた。
人々の怒りは限界に達し、神に対して人々は反旗を翻す。
この戦いは第一次聖戦と呼ばれ、結果は人々が散々に打ちのめされてしまった。
しかし人々は諦めなかった。
必死の抵抗を繰り返す中、“咎人”といわれる通常の人より強い人間が突然生まれた。
その“咎人”が、僕たちプレイヤーである。
“咎人”の参戦で状況は人々に好転するかと思われたが、“咎人”の力をもってしても戦況は不利のままであった。これが第二次聖戦と呼ばれる。
プレイヤーは“咎人”としてこの聖戦を終わらせる。
これがこのゲームの最終目標である。
販売初期のプレイヤー数は500万人以上いた。
しかしあまりの難易度に次々にやめていくプレイヤーが続出し、3年後には1万人を下回るようになった。この段階ですら神の一人の撃破報告はない。
僕はこの停滞している時期から参入した。
ある程度の情報は入ってきており、最初期のプレイヤーよりは優位に立てると思ったからだ。
実際はそんなことはなかったけれど。
さらに1年後、現在プレイヤー数は1000人を下回っており、一日一日過ぎるたびに減少している。
未だに神の撃破報告はない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます