第7話 狼少女は月夜に吠える。2
「ハァ、ハァ、ハァ……」
建物の隙間から月明かりが僅かに照らす路地裏の石畳の上を、ボロボロの服を着た、まだ幼さの残る銀髪銀眼の少女が、背後から近付いてくる複数の足音に怯えながら息を荒げて走っている。
裸足で走る少女の足は擦り傷だらけで、あちこちから血が滲んでいた。
「痛っ……!」
小石を踏んだ足にまた一つ傷がつき、少女は表情を歪めた。
それでも少女は走り続ける。
背後から迫る者達から逃げるために。
何度目かの角を曲ったところで、少女の前に壁が現れる。
そこは建物に囲まれた袋小路であった。
少女は慌てて引き返そうと振り返るが、そこには既に少女を追ってきていたガラの悪い男達の姿があった。
「イヤ! 来ないで!!」
少女は男達から距離を取ろうと後ずさるが、背後には壁が迫っている。
「へへっ、もう逃げられねぇぞ……」
先頭に立つ男は下卑た笑みを浮かべると少女へと歩み寄り、手を伸ばした。
「イヤ……いやぁぁぁぁあ!!」
絹を裂くような少女の悲鳴が路地裏にこだまする。
すると————
ザワ……ザワザワ……
月光の下で輝く少女の銀髪が、まるで生きているかのように騒めき始めた。その面妖さに男はピタリと手を止める。
「な、なんだ!?」
「コ、コナイデ……コナイデ……」
俯いて震える少女の声帯からは、先程発していたか細い声ではなく、まるで犬の呻き声のような鈍い音が漏れ始める。
「ガ……ガガ……グルルルルル!!」
先程とは逆に、今度は男達が後ずさる番であった。
ゴキゴキ……メキ……ミキッ……
男達の眼前で少女の肉体は不気味な音を立てて変貌を始め、徐々に獣じみた様相へと姿を変えてゆく。やがて音が収まった時、そこには銀髪銀眼で、鋭い爪と牙を持つ化け物が立っていた。
そして次の瞬間、路地裏に男達の悲鳴がこだました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます