第3話 お笑いコンビ現る。3
「どーもー! ムチャです!」
「トロンです」
「「よろしくお願いします!!」」
少年達が自己紹介すると、再び村人達から大きな拍手が起こる。
「いやー、実は俺達、昨日行き倒れていた所を村長さんに助けられたんですよ」
「村長さんがハンサムでキンチョーしちゃった」
「ちょびヒゲの太ったおっさんだったじゃねぇか!」
「村長さんは良い人だから、みんな村長さんの意見はソンチョーしてね」
「村長だけにな!」
あまりにもベタすぎる
どうやら二人は掴みに失敗したようだ。
「じ、じゃあ、ネタを始めさせていただきたいと思います! まずは漫才から!」
「ムチャさんムチャさん」
「なんですかトロンさん」
「私レストランの店員さんやってみたいんですよ」
「いいじゃないですか! じゃあ、私がお客さんやるから、あなたは店員さんをやって下さい」
「わーい」
掴みは悪かったようだが、二人は舞台慣れしているのか怯んだ様子もなくネタを始めた。
「すいませーん」
「いらっしゃいませ、一人ぼっちですか?」
「言い方悪いな! そこは『お一人様ですか?』だろ!」
「失礼しました。
「
「それでは景色のいいお席にご案内いたします」
「そうそう、そんな感じ」
「見てください、外には一面の墓地が……」
「どんなレストランだよ!」
二人は額に汗をかきながら一生懸命に漫才を披露しているが、村人達のリアクションはあまり良くはない。というのも、少年は早口のうえに怒鳴るように喋るので所々台詞が聞こえづらく、少女の方はやや声が小さく、なんだかもったりと喋るために非常にテンポが悪かったのだ。これでは笑うに笑えない。
しかし、それでも二人は漫才を続けた。
「じゃあ、このオムライスを一つ」
「かしこまりました、おスライムを一つですね」
「そうそう、あのプニプニとした食感がたまらないんだよね。ってバカ! オムライスだって言ってるだろ!」
「……あ」
すると突然、少女の方がマネキンのようにピタリと動きを止める。
「……どうしたトロン?」
「……ネタ、忘れちゃった」
「えぇ!?」
「次の
「バカ!! 次は『ご一緒にリヴァイアサンの姿煮はいかがですか?』だろ!?」
「えーと、ご一緒にリヴァイアサンの……なんだっけ?」
「姿煮だよ! す・が・た・に! あー、もう! トロンのせいでめちゃくちゃだよ!」
「うーん、でもこのネタはそもそもそんなに面白くなかったし」
「はぁ!? ここにきて今更そんな事言うか!?」
少女がセリフを忘れた事をきっかけに、二人は漫才そっちのけで言い争いを始めてしまった。
「何やってんだよー!」
「いいぞー! もっとやれー!」
しかし心なしか、観客達は先程漫才を見ていた時より盛り上がっているように見える。
「えぇい! 客を前にして喧嘩しててもしょうがねぇ! トロン、アレやるぞ!」
「アレって、アレ?」
「そうだ、鉄板ネタだ! えー、皆さん、諸事情により漫才はやめてショートコントやります! ショートコント・エンシェントホーリーフレイムドラゴン!!」
ステージの脇から少年達のとんちんかんなお笑いと村人達の様子を見守っていたドリスは、
「なんなんだあのお笑いコンビは……。よくあれで世界一の芸人になるなんて言えたもんだ」
と吐き捨てると、広場を後にして村役場に戻ろうとする。
すると、そんなドリスの元に血相を変えた一人の村人が駆け寄ってきた。
「村長! トラブルです!」
「またか! 今度は何だ!?」
「ゴ、ゴブリンの襲撃です!」
ドリスが噛み潰した苦虫は、今度は特大サイズの苦虫であった。
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