第4話 幸せ者
「こんな暗い話してごめん」
話終わると同時に僕は和香に謝った。
てっきりなんてことない顔で聞いていると思っていたのに、彼女は静かに泣いていたから。
その瞳を黄色に染めて。
普段の金色とはどこか違う、それでもとても綺麗な黄色だった。
「僕のせいなんて言っちゃダメだよ。本当は思ってないんでしょ? それならちゃんと正直に言わないとダメだよ! せめて、私には言って」
和香はそう言って、そっと目を伏せた。
瞳の色は、嘘の色だった。
「……僕は心のどこかで和香に気づいて欲しくてこの話をしたのかもね」
「え?」
「和香はなんでも僕のことをわかってくれる気がするから。だから、この気持ちを、僕の本当の気持ちを気づいて欲しくて話したのかもしれないなと思って」
そこまで言って、好きだという感情が一気に
今までにないくらいに。
ハッとして和香の瞳を見てみれば、その色はさっきと打って変わって綺麗なピンク色に染っていた。奥まで透きとおる、説明できないほど綺麗なピンク色だ。
和香はその大きな目を見開いている。
そういえば、前にこう言ってた気がする。
『その人の感情が見える時、その人は感情の色におおわれてるんだよ』
それなら今はもうバレてしまっているかもしれない。
「和香、僕ね。ずっと和香のことが好きなんだ。もし良ければ、──僕と付き合ってくれませんか?」
そう問えば、彼女はこれが夢じゃないかどうか頬をつねったり、何度も瞬きしてみたりと確認していた。
「こ、れは、現実? 夢じゃない?」
「うん。夢じゃないよ」
「そっか。よかった」
「よかったの?」
「嬉しいから、よかったの」
「え……。それじゃあ」
「うん、よろしくね。礼央」
今度は僕が頬をつねる番だった。
「ほ、本当に? これは夢じゃないよね」
「ふふっ、うん。夢じゃないよ。私も礼央のこと大好きだからね!」
そう言った和香の顔は、真っ赤になっていた。でもそれと同時に、今までにないくらい笑顔で、幸せ以外の何物にも見えなかった。その瞳もさっきとは違い、淡く綺麗なピンク色をしている。これは和香の恋の感情なのだろうか。そうだったら僕は一生に一度しかないこの恋を幸せに過ごすことができそうだ。
「ねえ和香、もうちょっとこっちに来てくれない?」
「ん? わかった。……っ⁉」
彼女が近寄ると、僕は思い切り抱きしめた。今はたたかれようが殴られようが、この幸せに浸っていられそうだ。
ずっとそうしていたら、最初は慌てていた和香もおずおずと背中に手をまわして抱きしめ返してくる。
ああ、やっぱり僕は幸せ者だ。
そう思いながら、どちらからともなく甘いキスをした。
END
何色にも変われるきみ 花空 @popflower
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