第3話 嘘か誠か
礼央side
和香が小学校の頃の話をしてからだいぶ経ってもうすぐテストと夏休みになる。
相変わらず僕はクラスの人とはほとんど話してなくて、唯一和香とだけは会話をしている。
和香も僕以外の人と話しているのを見かけない。和香の瞳のことにみんなが気付いているのかも、正直よくわかっていない。
ただ、いまは傷つかなければそれでいいと思う。心に傷がついたらそれで終わりだから。
❀❀❀
昼休み、いつも通り和香と昼食をとる時に僕の後悔を話した。
聞いてもらえるか分からなかったけど、和香には話してもらったのに僕は話さないのはフェアじゃないと思ったからだ。
僕は、幼稚園くらいの頃に自分の思うままのことを伝えて、傷つけた。
その対象は、僕の両親。いや、両親だった人だ。
その頃の僕はまだ幼くて、周りの状況を読み取るのが苦手なこともあって、すごく無神経なことを言ってしまったんだ。
確かあれは朝ごはんの時。家族3人で出かける予定を立てていた。
『ボク、遊園地にいきたい!』
そう言った僕の言葉が事の発端だったのかもしれない。
2人とも『この間言ったばかり』と言って渋っていたけれど、この意見を尊重してくれて週末に遊園地に行けることに決まった。
そしてすぐやってきたその日。楽しいと思っていた日は、最悪の日になった。
僕のせいで。
ジェットコースターを目指して走っていると、男の人に思い切りぶつかってしまった。
『わあ、ご、ごめんなさい!』
『大丈夫だよ。君は大丈夫?』
『ボクはへーきだよ!』
顔を上げた時、その人は見たことがあった。
その頃の両親も知り合いだと思っていたから、いつも通りに会話した。
『おにいさんも来てたの?』
『ん、え!? れ、礼央か?』
『うん。どうしたの?』
『い、いやなんでもないよ。それじゃあな!』
『またねー!』
何も分かっていたかった僕は、すぐに2人に話してしまった。
『おかーさん、おにいさんも来てたよ!』
『あ、あら。そうなのね』
母親が焦っていたのにも関わらず、父親にもそのことを詳しく話した。
『あのね、おかあさんと一緒に幼稚園帰るときに、いつもおにいさんも一緒に帰るんだ〜』
『礼央、おにいさんって誰だ?』
『おにいさんはね、おかあさんのお友達だよ』
『そうか』
父親はそれを気に険しい顔をして黙ってしまった。
家に帰ると途端に喧嘩が始まった。
『おい、礼央が言っていた人は一体誰だ』
『……ただの友達よ』
『それならなぜ俺は今まで会ったことがないんだ。お前の友達なら俺だって知っていてもおかしくないだろう?』
『友達なのに言う必要があるって言うの?』
『それなら友達じゃなかったらどうなんだ。浮気相手とかな!』
『な、何を言うの!? そんなことすると思ってるの?』
『前から少し怪しかったんだよ! 大体な、──』
この言い合いは、その頃の僕には意味がわからなかった。
今になったらそれは、母親の浮気が発覚した瞬間だとわかる。
結局そのあと2人は離婚して、親権は父親になった。
親2人に責められ、『お前のせいだ』と言われ続け、『僕が何かしたら悪いことが起きる』と植え付けた。
離婚騒動も僕のせいになった。
そう思うしかなかった。
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