第2話 恋と私
和香side
私は昨日、新しく高校に転校した。
今はまだ五月だというのに。
また私の瞳のこと、気味悪がられるのかなって思うと、不安が頭を何度よぎったかわからなかった。
だけど、たまたまかもしれないけど、礼央が羨ましいと思ってくれた、普通に接してくれたことが、そんな不安を全て消し去っていった。
暗がりのかかった私の心に、きれいな光を差し込んでくれている気がしたんだ。
❀❀❀
私が引っ越してからもう一ヶ月くらい経つけど、礼央とは必然的に話すことが多くて、基本的に一人でいるみたいだからお昼も一緒に食べている。
初日こそ質問攻めにあったけど、みんな私の瞳に気づいてすぐに話さなくなったんだ。
そんなある日、小学校の頃の記憶がよみがえってきた。
ちょうどいいし、私の過去のことについて礼央に知ってもらうのもいいかもしれない。
なんか知っててもらいたい。
そう思って、お昼に少しだけ話を聞いてもらうことにした。
時間になっていつも通りに屋上に向かうと、少し他愛もない話をしてからきりだした。
「これから、私が小学校の頃の話をしてもいい?」
「いいけど、どうかした?」
「ううん。大したことじゃないんだけど、その頃ちょっと嫌なことがあったの。もし良ければ聞いてくれないかな」
「もちろん! 僕でよければなんでも言ってね」
「ありがとう」
礼央は大きく頷いてくれた。
私には礼央の“頼って”という、その気持ちがちゃんと伝わってくるから、安心して話すことができるんだ。
❀❀❀
あれは確か、小学三年生の時。
私にはその頃、ちゃんと友達がいた。
礼央のように安心できる友達が。
ある日、その友達___
奏心は内緒で私に教えてくれたから、
『絶対に隠すね』
と約束した。
それでも私は、瞳にそれが写って見えちゃうから、その男子を見た奏心の恋の色が映ってしまった。
その色は、淡い淡いピンク色。
それは奏心の恋をまるっきり写していたんだ。淡い淡い恋をしている、と。
頑張って隠そうとしても、どうしても前を見ようとすれば、その色は誰かに見えてしまった。
私の瞳を見た人は、誰が誰を好きなのか、それをすぐに理解してしまって。
約束したはずの私が証拠になってしまった。
絶対にばらしたくなかったんだと思う。
その日から、奏心は私のことを避けるようになった。
他の人も、私のことを『裏切り者』と言って私と全く話さなくなった。
このときから周りに人がいなくなったんだ。
「だからね、礼央と今話せてるのがすごく嬉しいんだ!」
今まで一人だった。
「私の親も気味が悪いって、私を親戚のところに押し付けてどっか行っちゃったから」
「そうなんだ……。僕に聞かせてくれて、ありがとう。僕は絶対に味方だよ」
目の前の礼央は、とびっきりの笑顔を見せて、“安心してね”と言うように胸を張っている。
あの時から止まっていたこころの時計が、じわじわと溶けだした。
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