何色にも変われるきみ

花空

第1話 きみと僕

 きみとの出会いは突然だった。

 ある日、きみは僕らのクラスに転入してきた。

「こんにちは。今日から1-2の皆さんと一緒に生活する、井藤いとう和香わかです。これからよろしくお願いします」

 クラス中は、みんな釘付け。

 その中に僕も含まれていた。

 それは、きみがあまりにも綺麗だったから。

 髪の長さは肩くらいまでで、澄んだ黒色をしている。

 瞳の色は金色だ。

「じゃあ、席はあそこだ。空いてる席があるだろう。隣は有馬ありまだ」

 ……え? 僕の隣?

 驚いて固まっていると、すでに隣にはきみがいた。

「よろしくね、有馬くん」

「あ、うん。こちらこそよろしく」

 まさか隣になるなんて、思わなかった。

「分からないことたくさんあるから、何かあったら聞いてもいいかな?」

「う、うん。もちろんだよ」


 先生の話が終わると、早速話しかけてきた。

「フルネーム聞いてもいい?」

「あ、そうだね。僕は有馬礼央れお

「じゃあ礼央って呼ぶね。私のことは和香って呼んでくれていいよ」

 いきなり呼び捨てなんだ。

 かなりペース持ってかれて断れない。

「あ、今困らせちゃったね。ごめんごめん、ついクセで」

 クセ? まあ初対面なのによく話すから、こういうことも多いのかもしれないな。

 でも、なんで困ったってわかったんだろう。

 できるだけ僕は顔に出さないようにしてるのに。

 他人と話してい思い出はほとんどないから。

 井藤さん___じゃなくて、和香のことを不思議に思って見ていると、さっきと瞳の色が違って見えた。

 なんで色が違うんだろう。

 気のせいだと思いたくても思えない。

 だって、和香の瞳が純黒に染まっていたから。

「礼央、その顔は気づいたって感じだね」

「え?」

「面白いでしょ。私、人の感情がわかるの。読み取った感情の色によって、私の瞳の色も変わる」

「読み取った感情の色って?」

「例えば、今の礼央だったら困っている色。だから、私の瞳は黒くなる。悲しかったら青っぽかったり、嬉しかったらほぼ透明になる。怒ってたら赤くもなる」

 その話を聞いて、僕は単純に羨ましくなった。

 いつも口を開いたら、人を傷つけてしまっていた僕だから。

「礼央はさ、今までに後悔がたくさんあるんだよね。だけど、その後悔は絶対未来に繋がるから。それに、この力は必ずしもいいと思えるものでもないんだよ」

「なんで?」

「みんな気味悪がるんだよ。私の瞳の色が急に変わるから」

「でも色が変わるのは、ちゃんと相手のことを知ろうとしてるからなのに」

「そうだね。だけど、気持ちを知られるのが嫌な人はたくさんいるからね。みんな裏では何考えてるのか分からないから」

「なら、少なくとも僕は大丈夫だよ」

「うん?」

「僕は今まで、言葉を選ぶのが苦手であんまり人と話してこなかったけど、和香なら僕の気持ちをそのまま受け取ってくれるから」

「そっか。ありがとう。そういえば、たまに私の感情も瞳に出るみたいだから、授業中に観察してみるといいかもよー」

「ふっ、なにそれ」

「ほんとに面白いよ。目の前にいる人の感情も出るから、コロコロ変わるんだ」

 和香は、嫌なことも全ていい方向に変えていけるみたいだ。


 僕はそんなきみに、たった今恋をした。

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