3 「少しは歯に布を着せんか戯け」

 食べる事で魔力を回復出来る。

 シオンがそう気付いてしまってから、その後数日の食費はえらいことになっていた。

 とにかくシオンは何でも食べる。米やパン、肉だろうが魚だろうが、あるいは野菜だろうが刺身のだろうがとにかく何でもだ。

 好き嫌いが無い事は良い事だ。いっぱい食べる君が好きってな。


 ただし物事には何事も限度がある。

 このままコンビニ通いでは財布が持たないと自炊を試みたんだ。それをある時は、炊いた米だけをおかず無しにペロリと平らげやがった。

 他にも間食用の菓子類や、夜食用にと取っていた好物の袋麺やカップラーメンを俺が出勤している合間に完食してみたりと、その暴食っぷりはまさに悪魔の所業。

 それでいて一向に太る気配も無いのだから不思議な事この上ない。


「栄養はどこに行くのかだと? 全て魔力に変換されているに決まっておろう。

 何? 太らないのか? とな。

 ……ふっ、生憎余は生まれてから常にこの美貌を保っておる。そこらの女子おなごと同列に語るでない」


 などと当人は供述しており、世のダイエッター達を敵に回しかねない発言をしれっとする始末。満腹になる様子が無かったのも、どうやらそこに起因するようだ。


 そりゃ俺だって多少の同情や温情くらいはあった。人間にとって飯を食う喜びは本能レベルのものだからな。

 魔王がその人生で初めて沸いた食欲がいくら魔力回復のためだと言え、与える全ての食べ物を美味しそうに口に運んでいくのは、見ているこちら側も気分が良いものだった。


 だが、それも本日をもって終了とさせていただく。でないと俺の財布事情も終わる。


「──節約……だと……!?」


 俺はその日の夕食中に話を打ち出していた。

 魔王でもその単語の意味は理解出来るらしい。それを聞いたシオンは、近場に雷でも落ちたかのような表情で俺を見やっている。


「……あぁ、給料日前でな。

 金が、もう無いんだ……このままじゃ俺達は食べる事は疎か、アパートから追い出されちまう……」


 俺はさも悔しそうに、辛そうな表情さえ作り上げてシオンに頭を下げていた。

 

 もちろん嘘である。

 

 伊達に仕事に忙殺されていた手前てまえ、蓄えはそれなりにある。

 この数日で結構な金額を下ろしてしまったとはいえ、まだ通帳には向こう数ヶ月分の家賃や光熱費など、日常生活を送るのに必要十分な数字が記帳されている。

 それでもやはり今のペースで食費を重ねていけば、いずれそれも難しくなるだろう。どうにかしてこの収支のバランスを元に近い水準まで戻さねば。


 それまでテーブルの片隅に大量の空容器を重ねていたシオンは、俺の様相にフォークを持っていた手をピタリと止めていた。


「それは困る」

「そうだよな困るよな」

「うむ」

「うんうん……えっ? それだけ?」


 あっさりと頷かれてしまう。

 せめてもう少しこう、「そうか……いや、余もつい貴様に甘えてしまっていた。すまぬ。今後は控えよう」くらいの台詞を期待してたんだが。

 それともあれか、俺の演技が棒過ぎたか。


「何故余がわざわざ下々の金回りを気に掛けてやらねばならぬ」

「全世帯の大黒柱を敵に回す発言はやめろ」


 そうか腐っても魔王かこいつめ。

 まぁ最悪、いつもの脅し文句で無理やり納得させれば良いだけの話なんだが、あまり使い過ぎると効果が薄れそうでな。

 そんな事を考えていると、シオンは息を一つ吐いてフォークを食べかけの容器に置いた。


「……冗談だ。余とて今の立場くらい理解しておる。

 家主の貴様がそう言うのなら、それも仕方あるまい」

「まじか」

「妙に腹の立つ顔をするな貴様。余がそこまで自分本位だとでも思うたか?」


 思わなければこんなに目を丸くしていない。と口に出そうになった言葉を飲み込んだ。せっかく素直に引いてくれたのだから、ここで漏らすのは野暮ってもの。


「いや、すまん。お前だって早いとこ魔力を回復したいだろうにな。

 そう言ってもらえると凄く助かる。ありがとう」


 なので、俺も素直に礼を言うことにした。


「べ、別に貴様の為ではないぞ。

 貴様が路頭に迷われて困るのは余なのだからなっ」


 言いながら少し頬を赤らめているのが実にツンデレっぽい。

 少しでも可愛いと思ってしまった事が妙に癪なので、一つ素朴な質問を投げておこう。


「はいはい。ところで、今日は何のゲームをやってたんだ?」

「うむ。今日はこの恋愛をだな」


 シオンはテーブルの下に置いてあった物の内、一つのパッケージを手に取って俺に見せ付ける。それは数多くの個性的な女の子達の中から一人を選び、様々な方法を用いて恋愛状態まで持っていくことでクリアとなる、健全なゲームソフトだった。


「よし、片付けるか」

「待て貴様もう少し語らせろ。このっぷりが──」


 わからいでか。俺だって一時寝る間を惜しんでやり込んだわ。

 そしてこの日を境に、数日間跳ね上がっていた食費事情は徐々に右肩下がりへと向かっていった。


******


 早いものでシオンがこのアパートへ現れてから、もう二週間くらいになる。

 初対面から知り合い程度にランクアップした間柄とはいえ、アパートに帰ったら彼女でも何でもない女が居るというのは、未だに慣れないものだ。

 同棲、というよりもはや大きな子供の面倒を見てやってるような感覚ではあるが、以前に比べ、少なからず生活に張り合いが出ているのは事実。


 先日の一件で食費については見事なまでに落ち着きを取り戻した。

 あのような暴食は無くなったといっても過言じゃない。それほどシオンは食を控えてくれている。正直、これに関しては心底ホッとしていた。

 もちろん同じ屋根の下で暮らしている以上、掛かるお金は食費だけでは済まないのだが、その辺りはまぁ必要経費として今のところ割り切る他ない。


 ただ心配事は次から次へと沸き出てくるのが世の常だったりする。

 というよりは、こればかりはこいつを住まわせる上で必要な、お金以前の問題が俺の前に立ちはだかった。


 そもそもシオンは此処に居るんだろうか?


 命に関わる重要事項を回避できたからこそ浮上した、実にシンプルにして根本的な話である。ぶっちゃけてしまえば何時までなんだろうか、と言った方が正しいのかもしれない。

 もちろんまた体調を崩されても困るので、現時点ではアパートから追い出すつもりはない。しかしそれもこの先ずっととは言い切れない。

 だって俺がこの先ずっと、このアパートで暮らす保証はないのだから。


 いつもの座椅子を占拠し、相も変わらずゲームへ勤しんでいたシオンに休憩を勧め、俺達は互いにテーブルを囲んで茶をしばいていた。


「で、お前何時になったら帰んの?」

「少しは歯に布を着せんか戯け」


 どう話を切り出そうと悩んだ挙句、つい直球に投げ付けてしまった言葉をシオンは表情も崩さず叩き落す。


「もっともな疑問だろうがよ。魔力は回復してんだろ?」

「順調にな」


 「だったら何故」という俺の言葉に、シオンはコップに入った茶を一口啜って応える。


「……魔力が回復したとはいえ、転移した所で向こうに戻れる確証がないのでな」


 ゆっくりと喉を鳴らした後、シオンはそう続けた。

 なるほど、結局振り出しに戻る訳か。


「そもそも展開が現実離れしておる。余が慎重になるのも仕方なかろう」


 さしもの魔王様といえど、世界観すら飛び越えたのは想定外ということらしい。まぁその点においては俺も同意せざるを得ないのだが。


「試しに転移してみて、行った先が違ってたらまた戻って来れば良いんじゃないか?」

「それを出来る保証が無いと言っておる」

「手詰まりじゃねーか」

「本当にな」


 溜息が重なる。


「クク、いっそ戻れぬのなら、この世界を支配してしまうというのはどうか?」

「この部屋から出れない癖に何言ってんだ」

「そうか?

 魔力が戻り、その回復手段も判明した今の余が、とでも思っているのか?」


 ぞわりと背筋に悪寒が走る。こいつめ、また目元が変わりやがった。

 不敵にも口角を上げていたシオンの瞳が、先日同様に紅色混じりなものに変貌している。鈍い光を放つ瞳孔に気圧され、俺はまたしても慄いてしまった。


「おまっ、それはやめろって……!」

「貴様はまだ余の力を知らぬだろう?

 良い機会だ──見せてやろうではないか」


 確かに魔王はそう言った。

 俺の意識は、その直後に途絶えてしまった。


******


 次に俺が俺であると気付いた時、そこには

 いや、正確にはある。

 荒れ果てた街の外だ。俺はそこに立っていた。

 周囲に散乱する無残にも崩壊した建物は土埃さえ上げておらず、何時からその状態であったか示すように地面から草の根が張り巡らされていた。

 足元は瓦礫の山だ。コンクリートさえ砕かれた道路は土が丸見えの状態であり、裸足だった足裏からはやや冷たい感触が伝わっている。

 視線を巡らせてもほぼ全ての景色がそうであった。

 不気味なまでの静寂。それは遠くで何かが崩れるような音が耳に届くほど。


 なんだこれは。

 どうなってんだ。


 唖然とするしか無い状況の中で、またしても声が出ない事に気付く。

 確か、魔王は『見せてやる』と言っていた。

 これがそういう事なのか?

 奴は本当にこんな事をしでかしたのか?

 だとしたら余りにも急だ。余りにも無情過ぎる。


 人の姿はまるで見当たらず、何か物音がする度に視線を向けても瓦礫が横たわっているばかり。


「目が覚めたか」


 背後から聞き覚えのある声が聞こえ咄嗟に振り向くと、十数メートル離れた程度の場所に女の姿があった。

 暗色のドレスを着こなしており、衣装の隙間からは褐色の肌が艶やかに覗き見える。背広には足首に届かんばかりのマントが、吹き荒ぶ風によって翻っていた。


「お前は……か」


 ここでようやく声を取り戻す。そのまま、目の前の人物を確かめるように言葉を放った。


「そうだ。余が七代目魔王、グラシオンディーヌ=イフィニスである」


 魔王──シオンはニヤリと笑みを浮かべた。

 初見時シオンがそうだと気付けなかったのは、見慣れぬドレス姿であったことに加え、白銀の髪、その頭部の左右から曲がりくねって伸びた角による所為でもあった。

 そして以前とはまるで異なる、完全なる紅色に染まった瞳孔。その二つの目元からは、ドス黒い瘴気のような煙が止めどなく溢れている。


 俺は、死というものを生まれて初めて覚悟する。

 こんな言い方も大概ではあるが、奴の姿を確認し終えた瞬間に脳裏をぎってしまった。


 あぁ、俺はこれから死ぬんだな。と。


 不思議なもので、その瞳を見ただけで発狂する訳でもなかった。思いの外冷静だったのは、この時既に、生に対して諦めの境地に至っていたからかもしれない。


「……それが、本来の姿ってやつか」

「うむ。それで、どうだ?」

「どうだって……」

「お前っ……! 本当にこんな事をしやがったのかよ!?」


 周囲を示すように腕を振るい、この非情な行いを問い詰める。


「そうだな。まぁ、余にしてみれば造作も無い事だが」

「そんな事聞いてんじゃねぇよ馬鹿野郎!」

「ほう、これは貴様が声を張り上げるほどの事態か」

「当たり前だ! 何考えてやがる!?」


 淡々と答えてくるシオンに対し、瞬間的に沸き上がった怒りの矛先を向けた。しかしそれすらシオンは片眉を上げる程度に済ませてしまう。


「……外に出れないとか抜かしてやがったのはてめぇ、嘘だったのか」

「本来の余であれば、それに対する結界を練るなど容易い事。

 あまり舐めてくれるなよ人間。貴様ら如きが魔王の範疇に入ると思うな」


 シオンは冷徹に吐き捨てながら、一歩ずつこちらに向かって進み始めた。奴が足を踏み出す度に、凶悪な圧迫感がこの身に押し寄せてくる。

 それにてられるだけで卒倒してしまいそうだった。乾ききった喉元に胃液が絶えず込み上げ、幾度も吐き気を催してしまう。


「他の人達は、どうした」


 こいつが本当の魔王であった以上、分かり切っていた質問だった。

 それでもなお、俺は確認せずにはいられなかった。

 腹の底から絞り出された声は自分でも情けないと思える程に震えている。それは怒りによるものなのか恐怖からくるものなのか、自分でもよく分からなくなっていた。

 

「喰った」

「……は?」

「喰ったと言っておる。貴様が眠りこけている内にな。

 もはやこの世界は余によって滅ぼされた。よって、今この世界に生きているのは余と貴様以外おらぬ」


 シオンの様相は変わらず淡々としていた。

 それを聞いた俺は、足元の瓦礫をいとわず前面に駆け出していた。


 だと? のではなく?

 それはつまり、俺以外の連中を──俺の、家族すらも!


「クク、人間風情が余に立ち向かうか」

「うるせぇ! 殺してやる!」


 溢れかえった怨嗟を吐き出しながら走る。互いに接近した今、シオンの面は既に手が届く距離。左足を踏み込み、爪を肌に食い込ませるほど握り締めていた右の拳を、奴の顔面目掛けて送り込む。


「だが無意味だ」


 しかしこの拳は、シオンの台詞と共に現れた透明な壁に弾かれてしまった。その凄まじく硬いガラスのような壁の向こう側で、シオンは嘲笑すら湛えて悠然と立っている。

 弾かれた右手の先からは血が歪な弧を描いて噴出されており、を見てしまった俺は咄嗟に視線を背けてしまう。

 皮が剥けたなんてもんじゃない。内側の肉や、更にそれらが付着する白い物体まで見えたからだ。

 アドレナリンでも大量に放出されたか、じわりと痛む程度……だと思っていたが、一瞬でも状態を見てしまった事で俺の脳は突如として警報を鳴らし始めた。


「いっっっ、ってええええぇ!!!」


 今まで味わったことの無い強烈な痛みに絶叫してしまう。無意識に左手が右の手首を掴み、その先から流れ出る血を止めるべく強く握り締めていた。激痛は涙を呼び、鼻水すらも垂れ流してその場で悶え苦しむ。


「人間は脆いな。この程度の障壁で傷が付くのか。

 だが……よいか? 先に言っておくが、余は貴様を殺すつもりは無い」

「……あぁ!? 何を今更っ」


 涙で滲む景色の先に立っていたシオンは、こちらを見下したまま続ける。


「ふむ。では種明かしといこう。

 これは、だからな──」


 シオンはそう言って、指を鳴らす。

 その瞬間、またしても俺の意識は突然途絶えてしまった。


******


 再び目を覚ませば、そこは荒廃した場所ではなく、見慣れた部屋の天井が広がっていた。


「……俺は、いや、あいつは……?」


 テーブルの横たわっていた俺は、朦朧とする意識に頭を振って目覚めさせつつ、片肘を付いて上半身を起こす。

 

「目覚めたか」


 声の主へと顔を向ければ、シオンは俺が買い与えた服を着た状態で、座椅子の背もたれに身体を預けていた。


「……シオン! てめぇ!」


 すぐさま立ち上がり、俺はその胸倉を掴むべく足音を立てる。


「うむ、随分と錯乱しておるな。

 が、まずは落ち着け」


 その目元は、魔力を開放していない状態の眼だった。


「どうなってやがる……?

 お前は、この世界を滅ぼしたんじゃなかったのか?」

「ほう? 貴様の中で、余はその様に捉えられていたか。

 では、種明かしといこうではないか」


 先程と同じ台詞を吐いたシオンは、俺に睨まれている状況にも全く臆せず答えを述べていく。


 結論から言うと、俺が先に経験したはずの悪夢はその名の通りの幻だった。

 魔王の言う幻術とは、対象者となる人物が思い描き得る最悪のケースを想定させ、それを夢現ゆめうつつの中で見させる魔法らしい。

 つまり俺の場合は、こいつが魔王であるのを知った上でのケースだったという事になる。だから幻術の中でのシオンはそれを示すように世界を滅ぼしていた。俺以外の全てを喰らったというのは、食うことで魔力を回復するという点から想起された事柄のようだ。

 無謀にも殴りかかったのは恐らく、実際に以前引っぱたきたくなった衝動があったからだろう。もちろんあの時怒り狂っていた事も、要因の一つだと信じたいが。

 それを思い出してふと右手を見れば、怪我も血も無い、綺麗な拳がそこにあった。


「……悪趣味過ぎんだろ……まじで」

「それはそうだろう。何せ拷問に使うような魔法だからな」

「よりによって何でそんなもん選んだんだよ……」

「貴様の無礼な言葉に少々頭に来てな。仕置きがてらに使ってやったのだ」


『で、お前何時になったら帰んの?』

『少しは歯に布を着せんか戯け』


 ……あれか。

 あんな魔法を平気で使うくらいには気にしていたらしい。

 事の発端に大方の予想が付いた途端どっと疲れが出てきて、もはやツッコミを入れる元気すら無くなっていた。

 

「しかしなるほど。貴様のの中では余は外に出ておったか。

 結界……試してみる価値はありそうだ」


 目の前で独り言ちるシオンを尻目に、俺は床に両手を着いて崩れ落ちていく。


「おい」

「何だよくそったれ」


 不意に呼ばれたので恨みがましくそれに答える。


「久しぶりに魔法を使ったのでな。飯にしようではないか」

「お前はほんと……」


 あんな目に遭わせておきながら、よくもそんな台詞を吐けるもんだなと。

 俺は部屋の片隅に畳んである布団を引っ張り出し、シオンの台詞を思いっきりスルーしつつその中に潜り込んだ。


「……寝るわ」

「は?」

「疲れた。寝る」

「待て。貴様が寝たら余の食事はどうなる」

「知るか。寝る」

「待て待て。何を怒っておる。幻術か? あれが良くなかったのだな?」

「分かってんじゃねーか。じゃあおやすみ」

「待て待て待て。分かった。分かったぞ。

 ならば次は、快楽の夢を見せてやろうではないか」


 その言葉に一瞬でも反応してしまった自分の本能が憎い。


「酒池肉林というやつだ。男ならば好きなのだろう?」


 それに気付いたらしいシオンは更に追い打ちを掛けてきた。


「貴様の理想とする女子おなごが、そこでは貴様の思うがままになるのだ」


 何という甘言。いや、ではなく。


「……おやすみ!」


 体勢を変え、後頭部をシオンに向けた俺は煩悩を上塗りすべく羊を数え始める。

 背後で未だ誘惑の言葉をつらつら続けるのをひたすらに無視し、その後数十分間耐え抜いた俺はやがて今度こそ、意識を眠りの中に閉じ込めていった。


 それにしても。

 が現実でなくて本当に良かった。思い返すだけでも吐いてしまいそうだ。

 シオンめ、この借りは絶対に返してやるからな。

 そうだな──差し当たって今後しばらくは、可能な限り食事を質素なものに変えてやろう。魔力回復もままならない事に悶々とさせてやる。


 ……飯が出てくるだけ有情だと思いやがれ、くそったれ魔王め。

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