第7話 マジック・ローダーのたんじょう

 その夜、紗愛はマージとともに夕食をしていた。マージは一人暮らしで、一人で何事もこなしてきたので、一通り料理は作れるようだ。紗愛来た最初の晩、スープを差し出してくれた。これが美味しくて、この日も作ってもらった。


「マージさん」

「なんだ?」

「この世界って、女神様がいるんですか?」

「それは難しい質問……神がいるかどうかはわからない。だけど、神話は聞いたことはある、お前の話を聞いて思い出した。」

「神話……?」

「もう700年も前の話だ。神話と言ってよいだろう、その時が、いわゆる……マジック・ローダーの生誕ともいわれている」

「神様とマジック・ローダー、関係があるんですね」

「あくまで、神話上の話だ。だが……お前がここに来たのには、何らの『働き』があった、というのは間違いないだろう」


 あくる日、女神に会ったという話をギールに話してると、

「女神……? 残念ながら聞いたことない」

 村の人々にも聞いてみた。

「女神? アレだろ? 転移者にしか見えないとかいうヤツだろ?」

「そんなことより、早く奴をなんとかしてほしい……」

 と、皆、半信半疑であったが、


「女神さま!? 聞いたことあるよ!」

 この前マージの家に杖を貰いにきた小さな双子の兄弟、セーバスとシーバスは素直に信じてくれた。

「うちに絵本があるから、サーイお姉ちゃんに貸してあげるよ」

「絵本?」

 村の外れの木の下に座り、紗愛は本を開いた。その右側にセーバス、左側にシーバスが座って、二人は紗愛に読み聞かせた。


―――――†―――――

 マジック・ローダーのたんじょう


 むかし、むかしのことでした。

 このせかいには、それはそれはうつくしい

 めがみさまが、すんでいました。


 めがみさまは、このせかいにくらすひとびとを、てんからやさしく、みまもっていました。

 ひとびとは、いろいろななやみをかかえていました。


 おなかがすいたよう。


 さむいよう。


 こわいけものがおそってくるぞ!


 びょうきで、しにそうなひとがいるんだ……


 めがみさまは、ひとびとがなやみ、くるしむたびに、こころをいためました。

 なんとかすくってあげたい、と。


 そうおもっためがみさまは、てんからくだり、ひとびとのまえにあらわれて、こういいました。

「みんな、こまったときは、これをつかいなさい」

 そして、いろいろな「つえ」をひとびとにあたえました。


 いろいろなたべものをつくりだすつえ


 あたたかいほのおがでるつえ


 こわいけものをやっつけるつえ


 びょうきをすぐにいやしてくれるつえ


 ひとびとは、ほしいつえをどんどんとっていきました。めがみさまも、つえをどんどんつくりました。


 こうして、めがみさまのもとには、まいにち、ひとびとがつめかけてくるようになりました。


 めがみさまはだんだんとつかれてきてしまいました。


「ああ、わたしだけでは、もうひとびとをすくえない。そうだ、ひとびとのなかから、わたしのしごとをしてくれるひとをえらぼう」


 こうして、ひとびとのなかから、6にんのわかものがえらばれました。

 かれらも、つえをつくれるようにしたのです。


 かれらのおかげで、めがみさまは、ふたたび、ひとびとのようすを、ゆっくりみまもることが、できるようになりました。

 こうして、めがみさまは、あんしんして、てんにかえっていきました。


 えらばれた6にんは、ひとびとから、マジックまじっくーとよばれ、うやまわれるようになりました。

―――――†―――――


「サーイお姉ちゃんが見た女神さまって、こんな人だった?」

 絵本の挿し絵を指さしてセーバスが尋ねた。

「うん、そうね……似ているかも……」

「やっぱり! サーイお姉ちゃんは、この女神さまに呼ばれたんだね!」とシーバスが喜んで言った。


「でも……何のために?」と紗愛が呟くと、

「もしかして、マジック・ローダーがもっといてほしいとか?」

「そうだよ! サーイお姉ちゃんが、7人目のマジック・ローダーなんじゃない? 絶対そうだよ!」


「そうかしら……」紗愛はますます分からなくなった。

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