第1章 6人乃至は5人のMagic Loaders

第1話 もっと元気になった


「ベルツェックル様、あの少女のことですが……」

「見つかったか?」

「はい、空間も時間も歪んでいますが、『地球』なる世界にいるようです」


「……おお……この娘が、我々の希望、そして栄光となる……よろしい。転移を開始しよう」


「転移が完了しました。世界点004A-FD9Fに出現した模様です」

「これは……あの場所か?」

「残念ながら、少し遠くに行ってしまいました。まあ、しばらくはこの世界に慣れてもらう必要はあるでしょうし」

「そうだな……あっ……何てことだ! よりによってあいつが助けるとは」

「……あのおじい様、知り合いですか?」

「……これは、腐れ縁だな」


 ―――――†―――――


 来賀らいが 紗愛さあいが、最初にエグゼルアで見た生命体は、決してものではなかった。


 しばらくあてもなく彷徨い、空腹と、のどの渇きで倒れてしまったあとだった。

 朦朧とする意識の中、妙な感覚があったことは覚えている。

 何かを飲まされている感覚。

 光の玉のようなものを投げかけられる感覚。

 誰かが助けてくれているのだろうか。


 やがて紗愛は目が覚めた。すると、

「大丈夫ですか!?」

 そう語りかけるものがあった。


「!!! …………きゃあああああああああああ!」


 相手の顔――というか頭――を見た紗愛は驚き、一目散に逃げ出した。


「待ってください!」


 などという声がしたが、恐ろしくて、後ろを振り返ることはできなかった。


 走った勢いがあまって、崖から落ちてしまった。


 ―――――†―――――


「おい、大丈夫か?」

 気がつくと朝になり、ようやく人間に遭遇できた。70歳は超えている老人である。

「……あなたは?」

「それより、おぬしかなり弱っておるな。すぐにわしの家にくるがよい」

 といって、老人は紗愛を抱きかかえようとしたが、紗愛は払いのけるように

「大丈夫、です、ひとりで立て、ますから」

 立てなかった。

「無理するんじゃない」

 結局、老人に背負われ、老人が住むサジェレスタという村に着いた。


 村の若者が一人、話し掛けてきた。

「マージ様、どこへ行かれていたのですか。一人で出かけては危険です。さきほども『奴』の目撃情報が……」

「ギール、話は後だ。この娘を私の家まで運んであげてくれ」

「この子は……?」

「村の近くで悲鳴のようなものが聞こえたんだ。何か胸騒ぎがして、駆けつけてみると、この子が倒れていたんだ」


―――――†―――――


 紗愛は、助けられた老人の家に通された。


「私の名はマージ・パルカン。ここで村長をしている」

 マージは紗愛に、スープのような暖かい飲み物を差し出した。それを飲み干してようやく体力が戻ったためか、突然泣き始めた。

 紗愛はマージに抱きしめられるとようやく泣き止み、マージと話を始めた。自分がこの地、エグゼルアに迷いこんだこと、それはおそらく転移であろう、ということなどを聞かされた。


「マージさん、そういえば」

「何だ?」

「さっきの方が言っていた『奴』というのは……


 そう言った矢先だった。そのギールという若者が飛び込んできた。

「マージ様、大変です! 魔物が村へ押し寄せてきます!」

「なにっ!」


「マージさん!?」

「サーイ、お前は絶対出るな。ここでおとなしくしているんだ」

 そう言い残して、マージは外に出て行った。


 窓の外を覗いてみる。人間の二倍はあるかという生き物が、数匹たちはだかっていた。 マージ、村の若者達、小さい子どもたちまでもが必死に応戦している―――先ほど来たギールは参加していないようだが―――。彼らはめいめい杖のようなものを持っている。そして、杖からは炎が時折放たれている……この世界には、やっぱり魔法とかがあるのだろうか。


 だが、人間達より「魔物」たちのほうが有利に見えた。

 このまま黙って見てていいのだろうか、と思った紗愛は、家の中を見回した。家じゅうにおびただしい本数の杖が並べられていた。

 この杖を使ったら、自分も炎が出せるかもしれない、と思い、紗愛は一本の杖を握り締め、扉を開け、外に出た。


 「魔物」達はこちらには目を向けていない。紗愛は杖を自分の頭上にふりかざし、杖にありったけの念を送った。

 すると、杖のみならず自分の身体が青白く光り、光の玉が「魔物」目がけて飛んでいった。「魔物」は、


 もっと元気になった。


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