第2話 俺は魔法が使えない
「また、うちの子が学校さぼって……?」
「ほんと、カギン君には困ったものですよ……我々としてもどうしていいものか……」
などという会話が戸口から漏れてくるのを、俺はなんとかして逃げ出す道を探しながら聞いていた。
俺の名は……上のセリフに書いてあるから省略するが、こんな目に遭っているのはひとえに……このエピソードのタイトルになってるから省略するが、まあ、そういうことだ。
「まったく、せっかく国王様も新たな伴侶を見つけて、国の将来も明るいというのに、お宅の息子さんだけがこの国の汚点……」
俺は国王と比較されるような立派な人間じゃないですよー。そもそも、国王などと名乗っているが、このエグゼルアとかいう世界には国などないのだ。ここの町長は、ちょっと大きい町だからって、グレードの高い言葉を使いたいだけだ。
などと読者に解説してたら、もう母親がこっちに戻ってきてたじゃないか。はい、お説教タイム。
「一体いつになったら一人前の魔法戦士になれるの!」
……魔法戦士になんざなりたくないんだけど、という趣旨の返しをしてみる。
「何言ってんの! これじゃ、お父さんに合わせる顔がないじゃない……いつになったらお父さんの仇討ちをしてくれるのよ!」
と、涙ながらに説教するのがいつものパターンである。
俺の父親は、俺が生まれる前 ——この『国』に移住する前——に魔物に殺されたのだという。母親には大変悪いとは思うのだが、物心ついていない時期も含め会ったこともないので……父親を失ったショックというものを、俺は理解できないし、カタキウチだの言われても困るのだった。
「今からでも早く学校行きなさい!」
と言われて仕方なく外に出る。ちなみに学校というのは専ら魔法の使い方を、というか、魔法を使って魔物を退治する方法だけを教えているのだ。だから、魔法が使えない時点で自動的に落第生なのである。そんなところにわざわざ足を運ぼうとも思わないので、町のはずれのあたりをぶらついていた。誰かに見つかったら矢継ぎ早にバカにされるので、町の中心地はうかうかと歩けない。ここまではいつもと変わらない日常だった。
その日は普段見かけないものに遭遇した。町のはずれに一匹の魔物がいたのだった。やけにやせ細った体で、何かを物色しているようだった。おそらく捨てられている食べ物を探しているのだろうか?
「いたぞ!」
やばっ、誰かに見つかってバカにされるのか? と思ったら、どうやらその魔物を見つけた者がいたらしい。すると、多くの人々が集まってきて、その魔物目指して何やら発射している。あれだ。俺には使えないアレを使って追い払おうとしているのだ。
程なくして、その魔物に流れ弾が当たり、魔物は町の外に逃げ出した。
「やったぞ!」
「魔物など、この国からいなくなれ!」
「ベルツェックル様、万歳ー! ガイトゾルフ、万歳ー!」
連中がそんな雄叫びを挙げている隙を見て、俺はその場から立ち去った。そして、追い払われた魔物を追って、町の外へと飛び出した。
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