第86話 親友の捜索を断念させるドラゴン

 翌朝。

 まだみんな寝ているが、私は気が気でなかった。


 やっぱり、メディのことが心配。


 行く当てもないが、探さないわけにもいかない。


 何日もかけて、めぼしい所を巡った。


 まず、メディの故郷、浮遊大陸を降りた、魔物の村。

 ——知る者はいなかった。


 ウィスタ大陸に来てから、初めてメディを見たのは、あの水没した宮殿。

 ——水没した宮殿は、水没したままだ。


 それから、カルザーナたちに討伐されそうになっていた、ザガリスタの周辺の森。


 そして、最後にメディを——半透明のメディを——見た場所、あの宇宙船に乗り込んだ場所。


 何も手がかりは得られない。



 何をやっているのだろう。

 勝手にひとりで飛び出して、闇雲に捜すことで、何か充足感が得られたのだろうか。

 おじいちゃんに最初に助けてもらった時も

≪大丈夫、です、ひとりで立て、ますから≫

 なんて言って。

 結局立てなくて、「無理するんじゃない」とかカギンに言われ……カギン? おじいちゃんの話をしてたのに、なんであの男が……



 その時、頭上で聞いたことある羽音がした。


「……バウザス?」

 なぜ、あの男のドラゴンが単独で。あの男は乗っていない。


 あの板を持っている。

 やめてほしい。

 獣の姿だったおじいちゃんとの会話を、思い出させる。


「modotte koi」

 ……嫌だ。

「hebiatama ha bujida, megami ha aitsu wo korosanai」

 ……なぜ、そんなことがわかる。それに、その呼び方。あの男に刷り込まれたに違いない。


 その後も、板には色々と文字が出続けた。全部書いてたら、読みにくくってしょうがないので、抜粋する。


「…………ochitsukunda, ore ha shitteiru」

「…………ofukuro ha, okashiku natte shimattanda」

「………… dakara chikara wo kashite hosii」

「わかったわよ……戻ればいいんでしょ。」


 私は渋々、バウザスの背中に乗ることにした。

 その時、奇妙な物体に目が入った。


 この世界に似つかわしくない、金属製の機械のようなもの。

 ここは宇宙船に乗った場所。もしかして、その一部だろうか。

 念のため、持ち帰った。



 あっという間に浮島群を越え、ルカンドマルアに戻ってきた。


 アシジーモと、カルザーナの姿がない。

 イサキスは残っている。


「あれ、二人は?」

「カギンが『滅びの魔法』をどうしても作ると言い出したら、怒って帰っちゃったんだ。ザガリスタからドラゴンを召喚チャーターしてきて」

「おじいちゃんは?」

「じいちゃんはカギンと、うちゅーせんの中にいるみたいだけど……なんかカギンの様子が変でさ」

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