第73話 魔法が使えない主人公、必殺技を再び発動するも、

 さて、俺とアノルグがパラウェリばあさんのところまで行くとなると……あ、そうかバウザス、お前2人乗せたことあったっけ。


「iikedo, sonobun nanka kuwasero」

「おお、コイツはモラックが好物じゃったよな。好きなだけ持っていけ」

 村に自生している実をいくつか摘んで、ご機嫌をとった。

 幸い、アノルグは小柄だったので、俺の後ろにちょこんと乗る感じで飛び立った。

「おひゃー、コイツはゴツゴツしてて乗り心地が悪いのう……」


 浮島群を飛んでいけばすぐ着くだろう。


 あれ? 向こうからなんか来る。そいつもドラゴンっぽい。緑色? いや、バウザスと同じくらいの青色具合。体格は……バウザスと同じくらい、っていうか同じ。

 っていうか顔つき、羽の形大きさ、しっぽまで同じ、……うわっ! 急に炎吐いてきた! 炎の出具合も同じ。おい、バウザス、お前も吐け……何している? トゴリーティスには、何も表示されない!?

「うわわ、アノルグさん、なんか攻撃魔法持ってないスか!?」

「ひょー、わしがもってるのは、これだけじゃ」アノルグは、何か杖を出してきた。

「村の連中がケンカしたときに、音と光で脅かすヤツじゃ」ズコー。

「そんなんで……もないよりましだから使って!」

 アノルグが杖を使うと、どうだろう。すさまじい雷鳴とともに、稲妻が走り、ニセバウザスに命中。奴はもがきながら、浮島群の隙間から奈落の底のほうへと落下して行った。

「やった! アノルグさんいいもの持ってる!」

「……知らんぞい、あんな機能はなかったぞい」

「え? じゃあ今のは?」

 辺りを見回すと……あ!


「カギン、相変わらずバカなのね。さっき言われたこと忘れたの!? あなたには刺客が来るって。それを無視して出かけるなんてどうかしてるわ」

「サーイ、寝てろって言ったのに……」

「あなたにそんな心配されたくないの。おばあちゃんに変なこと聞くんじゃないかと思ったら気が気じゃないわ!」

「大丈夫大丈夫、絶対聞かないよー」

 と、はぐらかして先へ進んだ。サーイはまた、虹を発生させる的な魔法で浮島をぴょんぴょん渡って来やがる。


 木の上まで着いた。

「わしのこの姿を見せたら、ばあさんは嫌かろう。ここで人間になるとするかのう」


 そういうと、俺の持ってきた例の箱と、ステロンの杖を取り出して、

「ほり、使いなはれ」といって渡してくるではないか。

「え、俺がですか?」

「わし自身が使うとな、かけてる途中で姿が変わって、何が起きるかそら恐ろしい」

「俺はなー、魔法はだめなんすよ」

「なんじゃ、やってみもせんで。おまいさんはこういうキワモノ魔法ならイケるクチじゃとわしはにらんじょるがな」

 えー、しゃあない、とりあえず使ったふりでもすっか、とおもったら、杖をひょいと取り上げられた。


「アノルグさん、この男は信用なりません。本人がダメだと言うくらいですから、自他共に認めるデクノボーです。ここは、私に任せてください」

「な、なんだサーイ、横から急に。手柄を横取りする気か?」

「そうよ。あなたがアノルグさんを人間に戻してあげた、なんてことになって、おばあちゃんがあなたに心を許しでもたら大ーい変。……あの魔法のこともペラペラ喋っちゃったりしてさ」

「おい、やめろ」などと言ってたら、持ち前の魔力で超高速にステロンを発動。まばゆい光がアノルグを包んだと思ったら、そこには、爽やかなイケメンダンディーがいた。


「わ、私は……おおっ、人間だ、人間に戻っている!」


 ああー、一人称が普通にだし、人間って言わないし、多分最後は戻ってるとかだろうが違うんじゃー。


「サーイさん、ありがとうございます。早くパラウェリさんのもとへ行きましょう」

「はい!」


 おーい、俺のことはー? と言うまもなく、二人は木を降り始めていた。


 サーイのやつめ、そうやって手柄たてて、ばあさんから「滅びの魔法」について聞き出すつもりだな。


 ふっふっふ、大丈夫慌てるな。俺には必殺技がある! そう、「このエピソード終わらせる」だ! これでアイツのパートにスイッチして、アイツ視点で内容を書いて、なんだかんだで俺の知るところになるヤツだ。


 よし、終わらせる!

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