第69話 修復

 俺は、パラウェリのばあさんから、アノルグの人間だったときの記録……ステブによって書き出された状態が保存された謎の箱、を持ってまもラボへ戻った。


「ダーリン、おそい! なにやってたんよ? 見つかった? めえぼは」

「そんなことより、これをなんとかせんと」

 と言って、奥にいるメッツレツのもとへ急いだ。

「おい、お前、これ食えるよな?」

「ハイ、ココニイレテクダサイ」

 なんか蓋が開いたので、箱を入れて言った。

「ほら、前言ってたなんだっけ、べり……」

「ベリファイシマス」

「そう! それ! お前頭冴えてるな。やっぱり頭に変なモノ生えてないヤツは賢……」

 その時、間に割って入るは、頭に変なモノ生えてる方だった。

「『そんなこと』? あんたさっきそおいったよね!」

 また、すごい剣幕で。しかも顔近っ、ということは頭のモノも近い……俺は飛び退いた。


「おい、急に入ってくるな!」

「おじいちゃんを捜してたんじゃなかったの!?」

「これは、『滅びの魔法』を知るための手がかりなんだ! じいさんが作っていたって言うやつだ!」

「……やっぱり、あんたは所詮そのてえ度だったんだ」

「何がだ!?」

「あんたは、おじいちゃんを助けたいんじゃない。おじいちゃんが作った魔ほおにしかきょお味がない、そおいうことだよね!」

「そうだが? もとはと言えば、俺が追放された理由が、その魔法にあるから、って始めたことだし」

「どおして……サーイさんの前でも同じこと言えるの!?」

「は? なんでそこでアイツが出てくるん?」

「……あたし、こないだ出てったときに、サーイさんに会ったんよ! そしたら……サーイさん、あんたについて何て言ったと思う?」

「ボロクソだろ」

「……違う! あんたの言葉に『救われた』って言ったんよ!」

 俺の脳裏に、とある未公開の場面が浮かんだ隙に、向こうが続いてたたみかけてきた。

「それに……『おじいちゃんを必死に捜してくれている』って。そんな風に、あんたを頼りにしてる……それなのに、あんたのほおがそんな態度だったら、サーイさん、悲しむと思わないの!?」

「……どこの世界から来たともわからん女に、そう思われてもなー」俺はぼそりと返した。


 そのとき、メッツレツが

「ベリファイカンリョウ、エラーカショ:3、テイセイフゴウケンシュツニヨリ、エラーカショハスベテ、リカバリーニセイコウ」

 と言って、さっきの箱をいじぇくと?してきた。

「おおお、無駄話している間に、修復までしてたのか、さすがだ。よし、これでもうここには用なしだ」


「じゃあ、さっさと出てって!!」

 目には涙、頭の変なモノは全部逆立っていた。

「こわ、出る出る」


 そう言って立ち去ろうとしたとき、

「待て!」

 と呼び止めたのはとりのほうだ。杖を2本渡してきた。

「お前、もうここに戻れないかもしれんぞ……これはディセンダル。じいさんのIDがわかったら、これで連絡しろ。……それから、これはリークレット。その場にいる魔物(人も含む)のIDがわかる。確認に使え」

「了解」


 ……確かに、メディと会うことはこれ以降はなかった。まもラボでは。

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