第5章 マルチエンディング

第54話 へびのある暮らし

 あかん、何もする気にならん。寝よう。


 こういう時って、眠れないなんていうが、俺は、なんかすごい眠りに落ちた。スコン、と落ちる感じ。いつもとは違う感じ。泥のように眠る、という形容がもっとも適切か。


 それから、しょっちゅう夢を見た。だいたいへびに追いかけられている。それから、アイツの声も。


 ≪あーっはっはっは、あんた、ほんと、おもろいーー≫


 怖くて起きると……ああ、いないのか。よかった、絶対に。


 ≪うふっ、あたしってやーさしい!≫


 ≪あらぁ、あわてんぼおさんのくせに、遅かったじゃなーい?≫


 ≪みなのもの、ごくろおであった!≫


 ≪あんたののおみそは魔物以下だよ!≫


 そんな夢を16回ほど見た。

 怖くて起きると……ああ、いな1……くない2こともなく3ない4! いない^4の4乗=いる! 目の前に、へびががが

 うわぁあああ……


「おっはよー、寂しかったでしょー?」


「おわわわ、おい、起きてすぐ横にいるなや!」


「ゴメンねー、あんなこと言っちゃって。あたし、カギンのこと見直しちゃったー」

 え?

「な、なにがあったんだよ、外で」


「うふっ♪ ひ・み・つ!」

 だから、うふ、じゃねぇよ。うっとうしさが増大して帰ってきやがったな。


「姫様、お帰りがわりかし遅かったですね」

「あ! デウザも心配かけちゃったねー」

「今後、私のことは『とりあたま』とお呼びください……彼がそう名付けてくれました」


「あら、あたしがいない間、カギンったらデウザをそんなふーに? ……あー、わかった、そおゆうことね! やっぱ寂しかったんだー、あたしもよー」


「何言ってんだ、やめろー! 抱きついてくんなー! 近寄るなー」

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